限界を迎えた社員が辞めていくことは想定内
この女性としては退職することも考えているという。実際、この会社の離職率はかなり高く、その背景には、ノルマを達成するために「自爆」営業に手を染めても、結局いつまでも続かないことがあるらしい。上司も「自爆」の実態を薄々知りつつ容認しているのか、やがて限界がきて辞めていく部下が一定の割合で存在することは、想定内のようだ。
こんなことが可能なのは、見せかけの給与が割と高いためか、求人広告を出せば、いくらでも入社希望者が集まってくるからだという。もっとも、給与が高そうに見えるとはいっても、基本給は低く、歩合給が高いので、契約を取れない人は稼げない仕組みになっている。だから、稼ぎたいと思えばノルマを達成するしかないのだが、そのために「自爆」営業をしていたら、手元にはそれほど残らないことになる。
こうした仕組みは正当なのか、少なくとも雇われている自分たちにとっては損なのではないかという疑問を、この女性は休職してしばらく職場を離れてから初めて抱いたそうだ。
それまでは、「ノルマを達成するためにはどんなことでもする覚悟が必要だぞ」と上司から言われ続けていたうえ、ノルマを達成した同僚がほめられ持ち上げられる雰囲気にのまれて、彼女自身もがむしゃらに頑張ってきたからだろう。
「あの上司は部下を使い捨てにするだけ」
会社の仕組みも上司のノルマ至上主義も何となくおかしいと感じ始めてから、退職者の一人の女性に連絡を取って話を聞いた。すると、彼女も「自爆」営業が限界にきて辞めていたことがわかった。
「あの上司は部下を使い捨てにするだけ。周りの人に一通り保険に入ってもらったら、辞めてもらって構わないと思っているんだから。以前は女性社員に枕営業をほのめかすようなことを平気で言っていたそうだから、あれでもマシになったのよ」と聞かされ、恐怖すら覚えたという。
ただ、退職後も、他人の保険料を払い続けるのは嫌だった。だから、どうすればいいのか尋ねると、「解約すればいいだけの話」という答えが返ってきた。解約の際に多少損することになるかもしれないが、現在の会社に勤めている限り心身の不調が続きそうなので、辞める決心がつき、転職サイトに登録した。