「フィルターバブル」に陥っている

後者にとっては、どうか。

強く主張しているひとりは、『ゴーマニズム宣言SPECIAL 愛子天皇論』(扶桑社)を出版した、漫画家の小林よしのり氏である。「皇太子は天皇の子供! 本来、愛子さましかなれないのだ!」との立場に明らかなように、「男系固執派」に対峙たいじしている。

小林氏をはじめとする「愛子天皇論」者への反論や別の議論もある。

評論家の八幡和郎氏は、「愛子天皇」誕生への期待を理解しつつも、「より広く、現実的な視点で皇位継承を議論していくことが必要だ」とプレジデントオンラインに寄稿しているし、先に述べたように「女性宮家の創設」を認めない声も見られる。

あたかも、いろいろな考え方が自由に交わされているかのように映るかもしれないが、そうではない。

逆に、「愛子天皇」に関して、無視する立場(政党と大手マスコミ)と、前提とする立場(ネットや週刊誌)が、お互いのスタンスを視野に入れていない。昨今の情報社会の危うさとして指摘される「フィルターバブル」(みずからの考え方や価値観の泡の中に孤立する)に、どちらも陥っているのではないか。

スマートフォンでニュースサイトを閲覧する人の手元
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

なぜ「NGワード」になっているのか

いや、正確に言わねばなるまい。

「愛子天皇」をめぐって侃侃諤諤な人たち(ネットや週刊誌)にとっては、それをタブー視する人たちもまた議論の対象と言えよう。賛成であれ反対であれ、精緻であれ稚拙であれ、「愛子天皇」について考え、言葉を交わしている以上、その世界には確かに存在しているからである。

他方で、「愛子天皇」を口にしてはならないかのように、もしくは、せいぜい非難の的でしかない人たち(政党や大手マスコミ)にとっては、触ってはいけない「NGワード」になっているのではないか。

理由は、反発を恐れているからである。たとえば読売新聞は、3月24日朝刊の社説で、次のように指摘している。

自民党は、女性宮家の創設に慎重だ。女性宮家に子供が生まれた場合、皇位継承権を与えるのかどうかといった議論が生じ、皇位継承は父方が天皇の血を引く「男系男子」に限る、という制度が揺らぎかねない、との懸念からだ。