岸田文雄首相が、安定的な皇位継承策の本格的な議論に向けて動き出した。期待する声もある「愛子天皇」は可能性があるのか。評論家の八幡和郎さんは「皇室の永続性のためには、旧宮家の男系男子と女系の両方の可能性を残しておくことが必要だ。ただし、現行法制では愛子さまが天皇になることはまず無理だし、制度改正してもチャンスがあるのは愛子さまの子孫だ」という――。
上皇后さまの誕生日のお祝いのため、赤坂御用地に入られる愛子さま=2023年10月20日午前、東京都港区[代表撮影]
写真=時事通信フォト
上皇后さまの誕生日のお祝いのため、赤坂御用地に入られる愛子さま=2023年10月20日午前、東京都港区[代表撮影]

自民党内に「皇位継承を考える会議体」が誕生

岸田文雄首相が10月30日の衆院予算委員会で、安定的な皇位継承について「喫緊の重要な課題」と述べ、自民党内に総裁直属の会議体を設置すると表明した。

現在、日本の皇位継承資格は父方に天皇の血を引く「男系男子」に限定されており、資格を持つのは秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまの3人のみ。しかも、天皇陛下の次世代は悠仁さましかいないので、悠仁さまに男子が生まれなかった場合にどうするかが懸念されているわけである。

その場合、戦後に皇族でなくなった旧宮家の男子とともに、女系天皇や女性天皇も視野に入れるべきという議論も出ている。

また、具体的な制度論は横に置いて、愛子さまを天皇にという漠然とした国民の期待もある。

「愛子天皇」実現への道はなかなか険しい

しかし、女性天皇は現行法制で認められないし、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」の国会附帯決議に基づき設置された有識者会議(座長・清家篤元慶應義塾長)は、2021年の報告で、「次世代の皇位継承者がいらっしゃる中でその仕組みに大きな変更を加えることには、十分慎重でなければなりません」として、「愛子天皇」の可能性を否定している。

また、これまでの教育方針を見るに、両陛下は愛子さまに将来、天皇になる準備はさせておられなさそうだということも大事な視点だ。

ちなみに、私は男系男子派だと言われているが、保守系論者と違って、女性天皇や女系天皇に全面的に否定的なわけではない。本稿では、国民が待望している「愛子天皇」やその子孫が天皇になられる可能性について解説したい。

まず、一部の人たちが主張する「皇太子が空席」というのはデマである。天皇の継承順位第1位の皇族を「皇嗣」というが、それが天皇の子であれば皇太子と呼ぶ、と皇室典範にある。天皇の弟である秋篠宮さまをどう呼ぶかについては規定がなく、「弟でも皇太子としたら」という意見もあったが、皇嗣と呼ぶと法改正で決まった。

こうして秋篠宮さまは皇太子と同じ扱いとなり、2020年11月8日に、「立皇嗣礼」が国事行為として行われた。平安時代の醍醐天皇の時代から皇太子のシンボルである「壺切御剣」が天皇陛下から親授され、秋篠宮さまが次期天皇であることが確定した。

つまり、イギリスの故エリザベス女王の時代のようにクイーンが君主のときには、キングを名乗る者がいないのと同じで、呼び方の問題であり、皇太子は空位ではないのだ。