「愛子天皇」を夢見たとしても、過去の話

また、『女性自身』2020年3月24・31日合併号の「独占証言:雅子さま 15年秘める祖父の夢 愛子を天皇に」では、雅子さまの外祖父でチッソ元社長の江頭豊氏について取り上げている。

この記事は、当時の安倍内閣が女性天皇問題を封殺していると批判し、「『愛子さまを天皇に』は、雅子さま最愛のご家族の願いでもあったはず」で、江頭氏をとくに尊敬し慕う雅子さまはその夢をかなえたいと思っているだろうとしている。

「あるとき豊さんが『愛子さまが天皇になる夢を見たんだよ』と、とてもうれしそうに話していたことがありました」「雅子さまも、お祖父さまの夢のことはご存じだと思います」と、江頭夫妻をよく知る知人が言っていたというのだ。

奇しくも、江頭氏が亡くなったのは2006年9月24日で、悠仁さまが9月6日にお生まれになった直後であるから、江頭夫妻や場合によっては小和田夫妻が、愛子さまが天皇になることを夢見られていたとしても、それは悠仁さま誕生前のことだろう。そもそも皇后の実家の願いをかなえるために皇位継承は論じられるべきでない。

「男系男子vs女系」で対立しても仕方がない

私は正統性を維持するためには、男系男子が好ましいと思うものの、女性天皇も女系も絶対否定ではない中間派だ。皇位継承を確実に担保するためには、男系男子だけでは心許なく、一方、女系論も問題の根本的な解決にならないため、両方の可能性を残したいからだ。

いわゆる女系論者が論議の対象にするのは、眞子さん、佳子さま、愛子さまとその子孫だけで、眞子さんが結婚された今となっては、佳子さまと愛子さまだけだ。だが、二人とか三人の女性の子孫だけでは女系も含めても永続性は保証されないどころか、数世代もたたないうちに断絶しかねない。

男系男子の宮家男子も候補から排除すべきではないし、女系でも明治天皇の子孫くらいまでは視野にいれるべきだ。それから、男系男子でかつ女系で現皇室と近ければ、なお結構だ。しかも、旧宮家には明治天皇や昭和天皇の女系子孫も多くいる。

佳子さまや愛子さまに決め打ちで、旧宮家の誰かと結婚させるという安直な考えには反対だが、江戸時代に公家の養子に出た人や、明治になってから宮家の次男坊以下で臣籍降下した人の男系男子子孫は結構いるから、佳子さまや愛子さまでなくとも、女性子孫と彼らとの縁組みもありうる。

英国の王位継承権者は5000人ほどだが、日本でも100人くらいは確保しておきたいし、男系男子と女系の二陣営に分かれるのでなく、両方の可能性を残すほうが賢明だろう。一般に、女性君主は華やかで人気があるから「愛子天皇」誕生に期待する気持ちも理解できるが、より広く、現実的な視点で皇位継承を議論していくことが必要だ。

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