将来の皇位継承候補は将来の国民が決める

今上陛下が、上皇さまが退位されたのと同じ85歳余になられるのが2045年。そのときには、悠仁さまは38歳である。

旧宮家の何人かが皇族となり、愛子さまや佳子さまも、本人が希望されればだが、皇族の身分を保持されたまま結婚され、お子さまも大きくなっているだろう。

そして、悠仁さまに男子がおられなければ、そのころから次世代の皇位継承の議論が始まり、悠仁さまが60代になられる2070年ごろまでに「その次の天皇」の立皇嗣礼を行う必要がある。なぜかというと、悠仁さまが上皇陛下退位の年齢になるのが2092年だから、それまでの20年くらいは皇嗣としての準備期間が必要だからだ。

私は、もし、佳子さまや愛子さま本人が皇族に留まっておられ、男子がいたら、皇族の養子になるのもありだと考える。それならば、小室圭氏のような一般男性を皇族にしなくてすむし、外孫を養子にすることは徳川家や近衛家などでも事例があり、抵抗感が小さいからだ。

いずれにしても、悠仁さまのあとの皇位継承候補になるのは、いまはまだ生まれていない方たちだし、皇嗣を決める2060~70年代の国民からどう評価されているかの問題なのだから、現在の皇族への人気投票的な感覚で議論することは無意味だ。

すでに生まれた王族の継承順位は保持される

もちろん、皇室典範は形式的には他の法律と同じだから、改正することは可能だ。ただ、秋篠宮殿下が立皇嗣礼までされ、その跡継ぎとして悠仁さまがおられるのに、廃嫡するような制度改正をするのは国際的にみても非常識だ。

欧州各国では、20世紀末から女性王族の継承権を強化する動きがあるが、ほとんどの場合、すでに生まれた王族の順位には変更を加えていない。

たとえば、ノルウェーの皇太子には姉がいるが、長子優先に制度が改正されても、継承順位が1位になることはなかった。英国では、ウィリアム王子の三人の子どものうち、姉のシャーロット王女の王位継承順位は弟のルイ王子より上位だが、エリザベス女王の長男チャールズ国王の兄弟姉妹では、次男アンドルー王子とその子孫が姉のアン王女とその子孫より優先されたままだ。

男子優先だったスウェーデンは、現国王の第一子と第二子が女子で、第三子が男子だったので、本来は第三子が皇太子になるはずだったが、2年間の議論ののち、国王の反対を押し切って長女のビクトリア王女を皇太子にすることに決まった。これは、生後に王位継承順位が逆転しためずらしい例だが、王子がまだ物心がつく前ならいいだろうという判断だった。

王冠をかぶせたチェスの駒
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