公務の担い手不足を補う2つの案

現行の皇位継承制度においてもっとも問題となるのは、悠仁さまに男子がいなかった場合だ。皇室典範は、短期間に事故などが重なって皇位継承者が誰もいなくなったらどうするかについて規定していないから、その場合は超法規的解釈で女性天皇や女系天皇の誕生もありうるが、そういう異常事態はここでは論じない。

有識者会議は、「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきではないかと考えます」として、悠仁さまのお子さまがどんな構成になるかのめどがつく20年後くらいまで議論を凍結すべきとする。

悠仁さまに何人も男子ができれば安泰だし、もし女子だけであれば、旧宮家男子の子孫か悠仁さまの娘かの選択になる。また、秋篠宮さまの即位後は、次女の佳子さまの子孫のほうが、姪の愛子さまの子孫よりも優先されると見るべきだ。

ただし約20年間は議論を凍結といっても、何もしないわけでない。有識者会議は、公務の担い手不足を避けるためにも、①女性皇族が結婚後も本人だけ皇室に残る、②皇族が旧宮家の男子を養子にする(それが成立しないなら旧宮家の男子を皇族とする)ことを提案している。

旧宮家の男子は「天皇に不適」?

この2案は皇族数の確保策であり、直接には皇位継承と結びつかないが、20年後の検討の際に、優先的に皇位継承候補となる可能性が高い。

このうち①は、佳子さまと愛子さまが念頭にあるが、三笠宮家の彬子さまと瑶子さま、高円宮家の承子さまも対象になりうる。いわゆる女性宮家は、配偶者や子も皇族になるので、これとは違う。眞子さんの夫になった小室圭氏を「殿下」と呼びたくない、という声が多かったために議論が下火になったのだ。

女系論者は、旧宮家の男子には候補者がいないとか、生まれながらの皇族でない人は天皇に不適というが、事実に反する。たしかに小泉内閣のころは、「いきなり言われても……」という雰囲気もあったが、いまでは皇族になる可能性があるという自覚が生まれ、自分たちから手を挙げることはないが、望まれたらお受けするのが自分たちの義務だと考えている方が多い。

旧宮家は子どもたちの教育においても高い意識をもっているし、旧華族の集まりである霞会館でも、会員資格の見直しなどをして、旧宮家の分家などに受け皿を広げた。

さらに、②の皇族の男子を養子にすることを想定しているのは、悠仁さま世代であり、皇位継承候補になるのは、悠仁さまの次世代以降なのだから、彼らは生まれながらの皇族になる。現皇族との話し合いで、資質が高く、本人も納得した人物を選ぶのだから安心だ。

北白川、朝香、竹田、東久邇の4家出身者が、明治天皇や昭和天皇の女系子孫であるとか、久邇家が香淳皇后の実家であるのも好ましい条件になる。