「食欲がある」のは高齢者にとって重要な指標
私が高齢者においてとくに大切と考えるのは、厳格な食事療法まではせずとも、食欲に任せて量を摂取するのではなく、タンパク質の摂取不足を意識しつつバランスよく食べることです。
もっとも「食欲がある」ということは、高齢者にとってとても重要な「予後の指標」です。人はいずれ死を迎えますが、老衰で亡くなる方の終末期は徐々に食欲がなくなっていくことから始まります。しだいに元気、活気がなくなり、食事量が減ってくると、遠くない将来に生命の終わりが訪れます。
しかし、それが自然の経過なのです。「食欲がなくなる」ということは、本人の、「もうそろそろお終いにしよう」という意思表示、言うなれば「声なき訴え」でもあるのです。それを周りの人たちがいかに騒がずに穏やかに温かく見守っていくか、という視点も高齢者に接する際にはとても大切なことだと私は思っています。