「メタボ」は何歳まで気を付けるべきなのか
その「幸せな最期」を迎えるためには食事、栄養が重要であることは言うまでもありません。高齢者における栄養についても触れておきたいと思います。
食事、栄養というと、まず頭に浮かぶのが「食べ過ぎ、飲み過ぎ」による栄養過多、いわゆるメタボかもしれません。「メタボ健診」(特定健康診査)が国民に浸透してきたこともありますが、この「メタボ」は一生涯気にしながら生きていかねばならないものなのでしょうか。それともある年齢以降は気にせず生活しても良いものなのでしょうか。
そもそもこの「メタボ健診」は、いわゆる生活習慣病といわれる脂質異常症や糖尿病、高血圧症などを放置することによって生じる脳卒中や心筋梗塞といった血管の病気を減らすことを主眼としています。
これらの疾患によって生じる医療費と、後遺症で要介護状態になる人にかかる介護費用を減らすために、若いうちから対処せよという政策とも言えます。「メタボ健診」の対象は74歳まで。多忙のあまり食生活や運動習慣などが疎かになっている働きざかりの人たちが、この健診のターゲットです。
75歳を迎えると、同様の検査項目でありながら自治体によっては「長寿健診」とその名を変えます。しかしこの診査を受ける人は、つい前年までは「メタボ」を意識させられてきました。
75歳からは食事制限をしてはいけない理由
中性脂肪やコレステロール値などに、少しでも正常範囲を逸脱して「*」が付いていると、心配したり落胆したりする人も少なくないでしょう。もちろん心血管疾患等の術後でこれらの厳格なコントロールを指示されている人は別ですが、基礎疾患のない人やこれまでの健診でほぼ問題なしとされていた人は、まず心配ありません。
なぜなら75歳を超えて以降、厳格な食事制限をおこなってコレステロール値をコントロールしても、生命に大きな影響を及ぼす病気の予防に繋がらないからです。厳格な食事制限をおこなうことは、予防にならないばかりか、むしろ低栄養を招いてフレイルに陥らせ、悪影響を与えてしまうことにもなりかねません。
「74歳まではメタボ対策を、75歳からは十分に栄養を摂って」などと言うと、混乱してしまうかもしれませんが、これも万人に当てはめるべき指針ではありません。
食事が美味しく食べられる、食欲旺盛というのは、健康の一つの重要なバロメータではありますが、コントロールされていない糖尿病はさまざまな合併症を引き起こしますし、肥満は体の動きを悪くしますから、サルコペニアから転倒、骨折リスクをも高めます。