日本株を牽引する7つの有力銘柄「セブン・サムライ」のひとつ、東京エレクトロンとはどのような企業なのか。企業アナリストの大関暁夫さんは「時価総額はトヨタ、三菱UFJに次ぐ国内3位、平均年収は1398万円の超優良企業だ。背景には『付加価値の高いビジネスモデル』と『業界内トップのポジショニング』がある」という――。
東京エレクトロンのロゴマーク
写真=時事通信フォト
「SEMICON(セミコン)ジャパン2023」に出展した半導体製造装置大手、東京エレクトロンのロゴマーク(=2023年12月15日、東京都江東区の東京ビッグサイト)

平均年収1398万円の「超優良企業」

東京エレクトロン(TEL)という会社をご存じでしょうか。半導体製造装置メーカーという一見地味な製造業であり、一般消費者には決して知名度が高くない企業かもしれません。しかし同社は、今年2月に時価総額でソニーグループやNTTを抜き、トヨタ、三菱UFJフィナンシャルグループに次ぐ国内3位となった超優良企業なのです。

さらに特筆すべきはその平均年収の高さです。2023年3月時点での平均年収1398万円(平均年齢43.6歳、平均勤続年数15.6年)を聞けば、サラリーマンなら誰もがうらやむ好待遇企業であると分かります。同社がなぜここまで好待遇の優良企業であるのか、その秘密に迫ります。

まず東京エレクトロンの平均給与の推移ですが、2014年3月期に756万円だったそれは、18年に1000万円の大台を超えると(1076万円)、右肩上がりを続けて現在1400万円に迫るところにまで来ているのです。その伸びたるや9年間で約2倍弱。世の中が長期化するデフレ経済下で苦しみ、バブル経済崩壊後上がらない賃金が社会問題化している中で、そんなことなどどこ吹く風。このご時世に、高度成長期並みの給与の上昇カーブを描いているのは、脅威という他ありません。

東京エレクトロンの平均年収推移
図表=有価証券報告書を基にプレジデントオンライン編集部作成

1963年に「商社」としてスタートする

では東京エレクトロンとは、どのような会社なのでしょうか。まずはその歴史を紐解いてみます。同社は1963年、東京放送(TBS)の出資を受け、総合商社に勤めていた久保徳雄氏、小高敏夫氏によって創業されています。同社は当時の最先端技術であったIC(集積回路)に将来性を感じ、主に海外メーカーの代理店として拡散炉、リークディテクタ、IC製造機器等の納入・販売を手掛ける、商社でのスタートでした。

単なる商社ビジネスにとどまらず、差別化をはかるべく修理や機械の改良などのニーズに応えつつ技術的なノウハウを積んだことで、自社オリジナルの拡散炉を製造するに至り、70年にはメーカーへの第一歩を踏み出しました。

80年代に入ると、蓄積技術とノウハウを活かして、商社からメーカーに完全脱皮します。半導体装置製造という領域に特化し、世界への輸出にも踏み出します。さらに、より専門性を固めるために、半導体製造の「前工程向けの装置」に注力します。その結果、前工程4つの基幹工程のすべての製造装置を作る世界唯一の企業となり、90年代以降、業界に君臨する道を歩むことになるのです。