「トップクラスの世界シェア」を実現できたワケ

半導体業界というと、90年代前半まではNEC、富士通。東芝、日立といった日本の名門企業たちが世界のトップを占める日本のお家芸的領域でした。ところが、90年代半ばには米国に抜かれ、2000年代にはアジア勢にも抜かれて、今や米インテル、韓国サムスン電子、さらには台湾TSMCなどの後塵を拝することとなっていいます。

海外の各社は専業メーカーとして多額の技術開発投資を続けてきました。それに対して、日本の各社は総合電機メーカーであり事業の一部門としての取り組みであったがために、思い切った投資ができなかったことが世界から大きく後れをとった原因になった点は、各社が認めるところであります。

このような中にあって東京エレクトロンは、半導体製造の前工程向け装置製造専業である強みを十二分に活かします。流れの早い業界にあっても多額の研究開発投資と設備投資を続けることで、日本の半導体メーカーと同じ轍を踏むことなく発展の道を歩んだのです。

結果的に半導体製造装置分野で2万件を超える特許を有し、前工程における成膜、リソグラフィー、エッチング、洗浄という4つの基幹工程、すべての製造装置づくりを手掛ける最先端ノウハウを持つ専門企業としての地位を確立。多くの製品群でトップクラスの世界シェアを誇っているのです。

汎用メインボードに搭載された光るCPUの3Dイラスト
写真=iStock.com/adventtr
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価格競争になりにくいビジネスモデル

半導体製造機器に関しては、東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENホールディングスなどの専業企業が林立し、世界シェアは3割を超えてトップの米国に肉薄しています。そのような中で東京エレクトロンは2位のアドバンテストの約4倍の売上高をあげ、断トツの業界トップにあります。これにより、業界のプライスリーダーとして価格競争からは隔離された世界にあるわけで、この点はビジネスの収益性から見逃せないところです。

さらに、年間出荷機器台数約6000台の機器は、そのほぼすべてがオーダーメイドです。一度同社に発注した企業からすれば億単位の高額な機器を追加導入する際には当然先行導入機との相性検討に慎重にならざるを得ないという事情があります。すなわち、競合との価格競争になりにくいビジネスモデルである点もまた、収益性の確保に大きく寄与しているといえるのです。

このような業界事情の積み重ねもあって、同社は営業利益率で約30%という高い水準をキープしています。つまり、高額給与水準の源泉は付加価値の高いビジネスモデルと、業界内トップのポジショニングにあるといえるわけです。