勝負のカギを握る「スーパーアプリ」
アメリカに限らず、現在のデジタルを巡る戦いは、“スーパーアプリ”の存在にかかっている。顧客とデジタルでつながるだけでなく、一日に自社のアプリをどれくらい使ってもらうかの勝負だ。スマホにアプリが多数あるなかで、一日に何度も開くアプリはわずかだ。
スーパーアプリはいくつもの機能を統合したプラットフォームであり、小売業の場合はQRコード決済など支払い機能がベースになる。例えば中国の二強であるアリババとテンセントも、アリペイなどの決済機能から自社のECサイトや金融サービスに誘導するのと同様に、Walmartアプリも、底辺にWalmartペイがある構造のプラットフォームになっている。
Walmart Connectが再編された2021年はコロナ禍の真っ只中であり、三密回避需要が高まってキャッシュレス決済搭載のアプリが消費者に浸透していった。アプリで注文した商品を店舗で受け取る「ストアピックアップ」などの流れもできた。
世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートが、大量の顧客とデジタルで、スマホで、アプリでつながることが一気に進んだ時期だ。
「サードパーティ・クッキーの廃止」で成長が加速
顧客とデジタルでつながると、新しい価値が提供できるようになる。ウォルマートの場合は、店舗とデジタルの顧客接点を活かしたリテールメディアであり、広告プラットフォーム事業が展開できるようになった。
リテールメディアの生命線は、顧客とデジタルでつながることであり、スーパーアプリがなければ本質的なリテールメディア事業は困難になる。顧客とスーパーアプリでつながらない限り、リテールメディアの2.0と3.0は実現されないということだ。
さらに、リテールメディアの成長を加速させたのがサードパーティ・クッキーの廃止だ。広告バナーなどから発行されるサードパーティ・クッキーが、プライバシー保護の強化によって制限・廃止されると、従来のネット広告は複数のドメインを横断してユーザーの行動を追跡できなくなる。反対に、ユーザーが訪れたサイト(ファーストパーティ)が得るデータの価値が高まる。つまり、サードパーティ・クッキーの廃止は、多くの企業がメディアになるきっかけとなっている。