会議に出席するだけで血糖値は上がる

それでも「甘いもの」には癒しがあるから食べたい。そんな方も多いと思います。それは甘党の私自身も同じです。

というのも、緊張状態は、血糖値のコントロールという面でも、よい作用をもたらしません。精神が緊張している状況では、自律神経の中で交感神経という神経系が高ぶっています。

この交感神経系をつかさどるカテコラミンというホルモンは血糖値を上げてしまうことがわかっています。実際、何の飲食をしなくても、会議に出席しているだけで血糖値を50mg/dl近く上昇させたビジネスパーソンは私の外来にたくさんいらっしゃいます。

日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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一方、リラックスしたときにはたらくのが副交感神経です。GLP-1やGIPといったインクレチンが太らせることなく血糖値上昇を抑制するとお伝えしましたが、このうち、GLP-1にはホルモンとしての作用に加えて、副交感神経系を使って血糖値上昇を抑制するという機序があるとされています。

その意味では、リラックスすることそのものが、糖質疲労の予防・回復につながると考えてよいでしょう。

血糖値を上げないのは「人工甘味料」

心をリラックスさせてくれる甘いもの。私はそれを、人工甘味料によって楽しむことをご提案しています。

人工甘味料は怖いものなのではないかと懸念する方もいらっしゃることでしょう。

2023年に世界保健機関(WHO)によって発表された「人工甘味料は体重減量に推奨できない」という報告[75]や、「WHO」傘下の「国際がん研究機関(IARC)」によって同じく2023年に発表された「アスパルテームには発がん性の可能性がある」との見解に、人工甘味料は危険だと見なす風潮が強まったように感じます。

確かに人工甘味料の発がん性を指摘する論文は存在していて、有名なところではサッカリンは雄のラットに与えるとがんが起こりやすいとの報告があります。しかし、雌のラットでも雄のマウスでも、そうはなりませんでした。人間の場合は言わずもがなで、根拠になど到底なり得ません。米国ではサッカリンが一度販売停止になったものの、その後再許可されています。