計画が頓挫した当然の理由

その後この案は、東京湾に100万人居住の四面体都市を浮かべるプランに発展していった。海上にあればすぐに移動できるし、原子炉の熱で海水を淡水化し、廃棄物をリサイクルしながら、気軽に地球を一周することができるといった壮大なアイデアだった。

大澤昭彦『正力ドームvs.NHKタワー』(新潮選書)
大澤昭彦『正力ドームvs.NHKタワー』(新潮選書)

結局、これらの一連の計画は最終的に頓挫する。前述のとおり、建設費用が当初の想定以上にかかることに加えて、技術的にも困難を極めたことがその理由だった。

内藤は、フラーの計画を「夢以上と思わるる奇想天外の案」と評した。その奇想天外の案を支えたのは正力だった。

屋根付き球場計画以来、フラーと正力を傍で見ていた内藤は、「フラー博士の哲学的超世間的な点が正力さんとピタッとあい、大分共鳴したのであった」と述べている。

フラーと正力の荒唐無稽さにあきれながらも、その規格外の発想に没頭する無邪気さに、ある種の羨ましさを感じていたのかもしれない。

屋根付き球場に続いて、フラーの4000メートルタワーも挫折した。しかし、それで諦める正力ではなかった。

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