「田舎を見下す」という日本特有の偏見を捨てよ
こうやって一つ一つ検証していくと、東京が地方都市に勝っている部分って何なのか、単なる思い込みではないのか、わからなくなってきます。
能登地震の報道を見て、「地方は被災すると大変だ」という人がいますが、同じ規模の揺れを受ければ、過密都市ほど被害は膨大になります。しかも被災者や被害建物が多いほど、救援の手も、食料などの物資も、行き届きません。全員分の避難所を設けるのも至難の業。私が地方移住する動機の大きな一つが、首都圏が地震や富士山噴火などでマヒしたときに、一緒に巻き込まれたくはない、ということです。
都内に家を買ってしまって、地方にもう一つという余裕はない、あるいは、自分の職種は東京にしかないというのなら、仕方ないでしょう。ですが定年を過ぎ、子どもも独立したのに、地方都市移住を選択肢に加えないというのは、もったいない話です。
おそらくそういう人は合理性よりも、「自分は東京に住んでいる」という優越感が大事なのです。そういう人は、近所の人がスイスのジュネーブだとかハワイだとかに移り住むと聞くとうらやましいけれど、松本や那覇だと「自分のほうが勝った」と安心するのかもしれません。確かにジュネーブもハワイも素敵な場所ですが、物価は高いしコンビニもなく、日本の地方都市のように便利で住みやすくはありません。
松本に来たスイス人に、住むならジュネーブと松本のどちらがいいか尋ねたら、言葉の問題がない限り松本を選ぶでしょう。「田舎を見下す」という日本特有の偏見のない外国人の目から見たら、日本の地方都市は、どこに行っても住みやすく、魅力的なのです。「地方都市は教育環境が良くない」という、これまた集団幻想のような思い込みがあります。ですが、東京で「名門」とされる中高一貫校に入ったところで、英語が話せるようにすらなりません。日本の偏差値も、日本というガラパゴスの内側でしか通用しません。結局、有名校を卒業したいというのも、田舎を根拠なく見下すのと同じ、「東京しか知らない田舎者」の発想です。
そういう「謎の優越感」のために高い家賃を払うのはバカバカしいと目が覚めた人は、すぐに準備を始めてください。寒さが苦手か、暑さが苦手か。湿気が苦手か、乾燥のほうが苦手か。このマトリックスに自分や家族をあてはめ、北か南か、太平洋側か日本海側かを選ぶといいですよ。