※本稿は、中山淳雄『クリエイターワンダーランド』(日経BP)の一部を再編集したものです。
『ポケモンGO』のライセンス収入は一部だけ
コミュニティゲームの代表格といえばポケモンだろう。
誰もが知る『ポケモンGO』は2016年夏にリリースされ、ピーク時は2億人以上が遊ぶ世界トップモバイルゲームの1つになった。すでに8年目となる現在においても1億人近くがプレイを続け、毎年10億ドルを稼ぎ続けているお化けタイトルだ。
ただ、そのうちで株式会社ポケモン(以下株ポケ)に入るライセンス収入は「一部」に過ぎない。ゲームの収益の7割はゲームを開発した米国企業ナイアンティックに入る。任天堂も株ポケもナイアンティックの株式は持っているとはいえ、関連会社にすら該当しない少額出資だ。
ポケモンGOのリリース後に、株ポケの純利益は2016年の159億から2017年の88億円に減っていることからも、ナイアンティックからの配当額は年50億〜150億円といったレンジに収まるはずだ。
しかしポケモンGOのヒットを後押しに、株ポケは急成長している。ポケモンGOがリリースされた「2年後」の2018年から売上が急上昇し、2022年の純利益は5倍以上の489億円に達した。
決して「ゲームで一発当てたから」ではない
これはアニメ制作会社としては日本最大の東映アニメーションの純利益の4倍規模だ。玩具最大手のバンダイ(玩具部門)やタカラトミー、ライセンス最大手のサンリオよりも大きく、日本テレビホールディングスやTBSホールディングスと並ぶ利益額である。
つまりポケモンという1つのキャラクターライセンスだけを扱う企業が、もともと売上100億円、利益数億円だったところから、売上2000億円、利益500億円の超優良企業に変貌した。
サイズ的にはどのアニメ・玩具・ゲーム・出版のトップ企業も敵わない。当然ながら社員数もうなぎ上りで、2010年代半ばは200人程度しかいなかったが、今や1000人を超える。
これは「ゲームで一発当てたから」ではないのだ。株ポケの成長の根幹には、自社事業として行っているトレーディングカードゲーム(TCG)というフィジカルなコミュニティ志向型のゲームがある。