中国の脅威が高まる中、逆風は弱まっている

政治家サイドでも、熱心な議員は少ない。これまでみてきたように、情報機構の改革は、中曽根康弘、橋本龍太郎、町村信孝、安倍晋三といった、情報の重要性を認識してきた政治家が要職に就いて初めて前進してきた。

しかし、そうした政策は議員個人にとってみれば、地元での得票に結び付くわけでもなく、旨味がほとんどない。それどころか、霞が関の官僚の反感を買う可能性もあるし、さらに地元で旧来の反権力サイドからの批判が高まることも考えられる。政治的にリスクが高いのだ。

ただ、情報機関の新設は難しくても、とくに中国の脅威が高まっているなかで、情報機構の強化をさらに進めることの必要性は広く認識されている。メディアや国民世論の一部には、国家権力の強化に反対する声もあるが、かつてほどではなくなっている。

秘密の活動を行う以上、すべての情報を公開することはできず、100%の透明性担保は不可能だが、その懸念を減らすチェック機能を整備することを前提に、情報活動の強化は必要だ。

政府の秘密活動を暴走させないアイデア

単に政府に反対ということになれば、安全保障が犠牲にされることになりかねない。

もちろん日本は中国や北朝鮮やロシアのような国ではないので、情報保全にしろ、政府の情報活動にしろ、政権の権力維持の道具に使うのは許されない。したがって、政府の秘密活動にも、暴走させないように監視する仕組みは欠かせない。

米国では、上下両院の情報特別委員会などがその役割を担っており、機密情報については非公開での審議も行われる。日本でも当然、そうした監察制度をしっかりと構築すべきだろう。

たとえば国会にチェック機能を持たせるとか、司法による監察の仕組みを導入するとか、現場の暴走を防止するために政府内での監督を厳格化するとか、すぐには難しいかもしれないが、さまざまな案を持ち寄って議論することは有意義だろう。

また、これは筆者の思い付きレベルの私案だが、後々の責任追及が可能なように秘密活動の立案・許可の経緯と担当の責任者名を記録に残すことを義務付けるのはどうだろうか。筆者のこれまでの取材経験では、国家機関の権力乱用を牽制するのに、個人の責任を明確にするのはきわめて有効だと思う。