マーケットは自分でつくるもの

なんといってもストレスをためずに、自分のやりたい仕事をやりたいようにするのが一番です。

同じことをタレントの遙洋子さんにも言ったことがあります。彼女は『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(筑摩書房、2000年/ちくま文庫、2004年)を出してから、使いにくい女という評判が立って「TVの仕事が激減しました」と嘆いていました。

でも「代わりのマーケットができたでしょう」と。彼女には、全国の教育委員会や女性関係の団体から講演の依頼がくるようになりました。「わたしはああいうことを真面目にしゃべるよりも、チャラチャラした世界が好きなんです」と言っていましたが、ジェンダー平等の女性論客としての知名度もすごく上がったはずです。わたしは講演先で「サインしてください」と言われて差し出されたのが遙さんの本だったこともあります。「ごめんなさい。これはわたしの本じゃないの。ご本人に頼んでね」って答えました。

物書きをやるにしても媒体は一枚岩ではありません。だって『月刊Hanada』から『週刊金曜日』まであるんですから、読者と媒体を選ぶことも大事です。マーケットがなければ、自分のマーケットを自分でつくっていけばいいんです。

上野千鶴子流ケンカの上達法

仕事をするうえでイヤな思いは何度もしてきました。たとえば、男も女も「子どもを産まない女は一人前じゃない」と平然と言う人がいっぱいいます。そう言われれば「親になることだけが一人前になる方法ではありません」と返します。ほんとは、だとすれば子どもを産まない男は永遠に一人前になれないのか、と返したいところですが。

Twitter(現X)でバッシングを受ける人もたくさんいますが、わたしたちは同じようなことを面と向かって何度も言われました。「子どもを産まない女は信用ならない」「なんで産まないんですか?」と聞かれて、「大学では子どものつくり方を教えてくれませんでしたから」と答えたこともあります。すると「ボクが教えてあげましょうか」というバカな男もいました。「あなたは遠慮します」って返しますけど。ああ言えばこう言う、です。相手はあなたの人生を真面目に配慮して言っているわけではありませんから、コケにして返せばいいんです。

議論するカップル
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