ジョブ型の働き方へ 成果達成なら60歳以降も正社員

今後の高齢化社会で、増える一方の定年再雇用の高齢者に対して、全体的に低賃金で働くことが当然な「お荷物社員」の扱いを速やかに改革する必要がある。そのためには、企業側の変革だけでなく、現役社員の意識改革も必須だ。定年前の40歳代頃から、個人の職種を明確化した働き方を基本とする働き方に移行する必要がある。

企業がスキルの乏しい新卒者を一括採用し、企業内での配置転換を通じて、長期的に熟練を形成していく現行方式は、欧米のような若年失業問題をもたらさない優れた面がある。しかし、それを40~50歳代まで漫然と続けるのは、低成長期には過大な投資となる。このため多くの社員について20~30歳代までは、現行の年功賃金の下で多様な職種を経験し、40歳代頃からは、自ら選択したフラットな賃金の特定の職種に専念することを原則とした組み合わせが望ましい。

個人の職種を限定するジョブ型の働き方のメリットは、正社員ならどのような業務にも対応するという現行の働き方と比べて、仕事能力の評価が容易となることである。その影響でおのおのの職種に必要な成果を達成・維持できない「お荷物社員」は、年齢にかかわらず、一定の補償金で退職しなければならなくなる。つまり、シビアなクビ宣告をされるケースも増えていくことになるだろう。

しかし、逆にその成果の条件を満たしている限り、年齢にかかわらず働き続けられる。公平な評価の下で、個人が自らの退職時期を選べることが、高齢者活用の基本的な要件といえる。

オフィスで笑顔で面談をする男性
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

平均余命の長い日本では、同じ本人の働く能力が60歳から61歳になると大きく低下するとは考えにくい。ところが現実には、「後進に道を譲る」ことが“強制”されるのは、管理職ポストを高齢者が退職しなければ後任が上れない一方通行の階段と考えているためであろう。しかし、それが回転ドアのような出入り自由な仕組みであれば、不本意な退職を強制される必要性は小さくなる。

例えば大学という組織はとても効率的とは言えない。しかし、学部長や学科長という管理職は、必ずしも企業のような「上がり」のポストではない。それは教員という明確な職種を前提に、義務的に就かざるを得ない一時的なポストであり、任期が終われば元の平教授に戻り、本来の業務に専念することができる。企業でも、課長ポストを回り持ちで行うような方式にすれば、それだけ管理職の苦労が共有され、平社員の不満も軽減できるのではないか。