防衛省が次期戦闘機に求めるコンセプトは、①量に勝る敵に対する高度ネットワーク戦闘、②優れたステルス性、③敵機の捜索・探知に不可欠な高度なセンシング技術、の3点を併せ持つ機体とすること。
資料には「このような戦い方を可能とする戦闘機は存在しない」と異なる字体で大きく書かれ、防衛省が本気で「令和のゼロ戦」の開発を目指していることがわかる。
日英の方向性は重なっていたが…
「高度ネットワーク戦闘」は、大容量高速ネットワークを駆使して敵の情報を味方同士で共有する。特徴的なのは無人機との連携だ。
無人機は戦闘機のパイロットが操作して複数の機体を同時に飛ばし、戦闘機と無人機の編隊を構成する。無人機から得られた情報を戦闘機が統合して活用する。有人機と無人機がワンチームとなることから「チーミング」と呼ばれ、人的資源が節約できる一方で対処力は強化される。
すでに中国やロシアは戦闘機と連携する無人機の開発を進めている。数的に有利な中ロでさえ導入する技術を戦闘機数で劣る自衛隊が導入するのは必然といえる。英国のテンペストもレーダーに映りにくいステルス性や無人機との連携を想定しており、この点でも日英の方向性は重なった。
だが、この後、暗雲が漂い始める。
英国側は、共同開発の割合を6:4、もしくは半々とすることを主張し始めた。この割合は開発にとどまらず、生産時の分担割合にも反映される可能性が高い。日英双方にとって持ち出すカネは少ない方がありがたいに決まっているが、英国は日本側の負担をより重い6割にしたいというのだ。
日本の技術を当てにする英国の厚かましさ
英国のテンペストは構想段階だったが、日本が次期戦闘機へ向けて開発した先進技術実証機「X2」は実際に製造され、テスト飛行にも成功している。ステルス機を日本が製造できることを文字通り、実証した。その意味では日本は英国より一歩も二歩も進んでいる。その日本の技術を利用したい割には言うことは厚かましいのだ。
防衛省は独自開発した場合の経費を1兆4000億円と見積もった。高いと批判されたF2戦闘機の開発費の実に4倍以上にもなる。ただし、共同開発となれば、1兆円程度まで削減できる見通しが出てくる。
日英伊3カ国の防衛相は昨年12月、共同開発を実現するための新たな国際機関「GIGO」を設立する合意文書に署名した。
注目すべきは、本部を英国に置くと決まったことだ。英側関係者による接触が容易になる一方、飛行機で半日以上かかる日本にとって極めて不都合だ。主導権を英国に握られかねない体制といえる。
GIGOの代表は日本政府から出すことになり、英語が堪能な岡真臣元防衛審議官の就任が有力視される。温厚な人柄で人望も厚いが相手は百戦錬磨のジェントルマン達である。かの地にあって日本側の意向を通すのは容易ではない。