話は脇に逸れるが、英国は現在も続くイスラエルとパレスチナとの問題をつくり出した元凶とされる。第1次世界大戦の最中、戦況を有利に運ぼうとアラブ人、ユダヤ人、フランスとそれぞれ異なる協定を結んだ「3枚舌外交」で知られる。巧みな交渉術といえばそれまでだが、自分勝手な主張を通そうとする国だと警戒して向き合う必要がある。

防衛省は「主導権を失いかねない」と危機感を募らせる

自民党が公明党に対し、2月末を期限として武器輸出を一部解禁した「防衛装備移転三原則」の見直しを迫るのは、3カ国による分担割合の協議がこの春から始まるからだ。

防衛省が先月、自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議に提出した文書には「対等のパートナーとして輸出にかかわる努力をしない日本の意思は、英伊から軽んじられ、実質的に英伊中心に移転先が選定されていく恐れもある」と主導権を失いかねない危機感が記されている。

さらに「輸出も含めた各国のコスト面、技術面での貢献度合いは作業分担に大きく影響する」とし、「現時点で我が国からも完成品を直接移転できる枠組みを整えておかなければ、効果的・効率的な防衛力整備にも支障をきたす恐れがあり国益に反する」とあり、輸出解禁を「国益」として決断を迫っている。

防衛省関係者は「現段階でも英国に主導権を握られている証拠。担当者は『協議開始の時期に合わせて政治判断を求めたまで』と言うだろうが、英国に急かされ、無意識のうちに国内の問題にすり替えている。技術面の優位性を生かしきれていない」と指摘する。

X-2(先進技術実証機)
写真=防衛装備庁(航空自衛隊撮影)
X-2(先進技術実証機)

公明党が慎重姿勢に転じる

「防衛装備移転三原則」の見直しをめぐり、自民党と公明党は国内でライセンス生産した武器について、ライセンス元国への輸出を認めることで昨年中に合意したが、次期戦闘機の輸出をめぐっては昨年11月、公明党が慎重な姿勢に転じた。

公明党の山口那津男代表は昨年12月22日の会見で、輸出解禁について「もっと原点に戻って議論する必要がある。2月にとらわれる必要はない」と述べて慎重に対応する考えを示した。

自公の実務者協議は昨年7月、「第三国にも直接移転できるようにする方向で議論するべきだという意見が大宗を占めた」との中間報告書をまとめていたが、公明党が考えを変えた。

昨年11月といえば、公明党の支持母体・創価学会の池田大作名誉会長が死去した時期と重なる。「名誉会長のため」として選挙を頑張ってきた実働部隊である会員へのいっそうの配慮が必要になり、これまでのように自民党の右旋回した政策に追従するだけでは収まらないと判断、「平和の党」への原点回帰を図ったとみられる。