年金受給者のふるさと納税の上限をチェック

ケース4●一定以上の医療費などがかかった場合

医療費控除の計算式は、所得が200万円以上か未満かで変わります。

医療費控除の計算式
【所得200万円以上】(年間の医療費合計-保険金や公的給付など補塡ほてん金額)-10万円
【所得200万円未満】(年間の医療費合計-保険金や公的給付など補塡金額)-所得の5%

現役時代に医療費控除の申請を行ったことがあると、「医療費が10万円を超えたら利用できる」というイメージをする方が圧倒的に多いです。しかし、年金生活者の場合「所得200万円未満」に該当するケースがほとんど。

医療費が「所得の5%」を超えた場合に医療費控除が利用できます。仮に所得が80万円ならば、医療費が4万円を超えると医療費控除が利用できるようになります。

【図表】医療費控除の対象の範囲
出典=『1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100』(頼藤太希、高山一恵)より

医療費控除で認められる費用は図表3のとおりで、治療に必要な出費であればほぼ医療費と認められますが、病気の予防や健康維持、疲労回復が目的の出費は認められません。医療費控除は「生計を一にしている親族」の医療費も合算可能。家族分をまとめて申請しましょう。

医療費控除が適用できるほど、医療費がかかっていないという場合は、セルフメディケーション税制が適用できないかをチェックしましょう。セルフメディケーション税制は、特定の市販薬を購入し、年間費用が1万2000円を超えた場合、その超過分(最大8万8000円)が控除対象になる医療費控除の特例制度です。

レシートや領収書、健診の証明書は提出不要ですが、自宅で5年間保存する必要があるので、捨てずに取っておきましょう。また、両制度は併用ができないので、より控除額が大きくなるほうを選んで利用してください。

ケース5●ふるさと納税をした場合

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄附をして手続きすると、寄附金控除が受けられる制度。自己負担額2000円を超えた金額は所得税や住民税から控除できるうえ、寄附先の自治体から各地の名産品や生活用品などの返礼品を受け取ることができます。返礼品は寄附額の3割を上限に設定されています。

ただ、自己負担が2000円で済む寄附額には上限があります。上限を超えて寄附をしても税金は安くならないので、上限額を調べて寄附しましょう。

【図表】年金生活者の自己負担が2000円となる寄付額の目安
出典=『1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100』(頼藤太希、高山一恵)より

ふるさと納税をしたら、確定申告で寄附金控除の手続きを行うことで税金が安くできます。e-Taxを利用すれば「寄附金受領証明書」「寄附金控除に関する証明書」の提出も不要です。ただし、これらの証明書は5年間保管しておくようにしましょう。

ふるさと納税は正確には「節税」ではありません。納めている住民税を、寄附先に預け替えるような制度です。賛否両論ある制度ですが、ふるさと納税を行えば、返礼品がもらえるわけですから、何もしないでいるよりは確実にお得な制度です。