ネガイメージを悪化させた「頂き女子」

ただ、「税金が高くて生活が苦しい」と悲鳴をあげる庶民の感覚としてはとても「だいじょうぶ」な話ではない。港区女子たちに対して「脱法」や「脱税」という違法イメージを抱いた人もかなり増えていったはずだ。

ストレートに言ってしまうと、「何かしでかしそうなヤバい女」というイメージである。

話を整理しよう。「ハイスペック男性との結婚を狙う、奢ってもらうのが常識の女性」はいつの時代も存在していたが、2000年前半のITバブル時代になると経営者やエリート男性たちから謝礼をもらって飲み会に参加をする「ギャラ飲み」をする若い女性が徐々に増えていった。彼女たちはいつしか「港区女子」と呼ばれていく。

しかし、21年ごろから急速に「ギャラ飲み」でこの世の春を謳歌おうかする港区女子たちの「傲慢さ、不幸さ」や「心の闇」にフォーカスを当てるようなコンテンツが増えていく。そして、国税によって「ギャラ飲み」にメスが入ったことで、「脱法」「脱税」「カネに汚い」という違法イメージまでオンされる。

23年に入ると、そんな港区女子のネガイメージがさらに拍車がかかる。23年8月には、パパ活で1億6000万円以上を荒稼ぎして、そのカネを引っ張るテクニックをマニュアルにして販売していた「頂き女子りりちゃん」を名乗る女性が詐欺容疑などで逮捕され、社会的にも大きな話題になった。

札束を持つ女性
写真=iStock.com/show999
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「奢り奢られ論争」は日本の永遠の課題

港区女子側からは、「私たちはギャラ飲みだ! あんな実質的な売春行為と一緒にするな」というお叱りが飛んできそうだが、世間的には「女性が若さと美貌を武器に男からカネを引っ張る」という点においては、残念ながら同一視されてしまう部分もあるのだ。

そこへ加えて、10月になると料理研究家でインフルエンサーのリュウジ氏がSNS上で「なんで男ってだけで知らん女子の飯代払わなきゃいけないの?」「俗に言う港区っぽい飲み会に多いけど(中略)ご飯会で当然のように男が出すっておかしい」と投稿して大きな話題にもなった。

この「女性に奢りたくない論争」というのは古くは高度経済成長期から確認される、戦後日本の普遍的な現象だ。しかし、今回はより女性への憎しみが込められているように思えるのはやはり、ここまで続く「港区女子」という存在に対するネガイメージもあるのではないか。