24年は伝統的な金利運営に返る年

つまり、米国経済が財政拡張政策の後遺症を短期金利政策によって治癒しようとしていると、短期金利をゼロ近くに抑え込む日本の金融政策は困難な立場になる。デフレから十分に脱却できていないという見方からは、長短金利操作を継続したいという要請もあるだろう。日本の銀行業界には米国ほど低金利の債券に投機をする機関はないにしても、長期にわたる低金利に慣れてしまっている。そこで伝統的な金利操作に変わって金利が上がると、虚を突かれて経営不安が起きる可能性を、たとえわずかにせよ日本銀行は心配しているのではないだろうか。

日本銀行
写真=iStock.com/Manakin
※写真はイメージです

今年、日本銀行はより大胆に金利正常化に向けて動いていい、とリフレ派と言われる私も考える。戦後混乱期を除いて、日本経済が2桁のインフレーションに巻きこまれたのは、石油危機後の1974年だけであった。その1年前、2年前の卸売物価、輸入物価の推移をみると、実は現在の日本経済の状況にとてもよく似ているからである。慶應義塾大学の野村浩二教授が開発した為替レート換算の価格水準指数によると、円ドルレートが150円を切るような場合は日本の生産費が米国の3分の2ほどになり、日本の輸出製品がバーゲンになっていることを示している。そして今、求人倍率や総需要ギャップは改善しつつある。長短金利操作をやめるときのショックには注意しつつ、24年は伝統的な金利運営に返ってインフレに対する防備に備える年であるように思う。

【関連記事】
意思決定に女性が関与したほうが業績が上がる…男女格差解消は日本経済活性化に必須条件である理由
日経平均株価は5万円を突破…四季報の達人が「海外から日本へ投資マネーが集まる」と確信する理由
習近平はもう詰んでいる…「不動産バブル崩壊」の次に進む「中国人富裕層の国外脱出」の深刻すぎる状況
3億円超だった「世界初のつぶやき」は21万円に大暴落…「NFTバブル」を煽りまくったエセ富裕層の末路
なぜ和歌山県で「1億円プレーヤー」の農家が増えているのか…東大教授が絶賛する「野田モデル」の画期的内容