アメリカの経済政策は今年も要チェック

日本銀行の伝統的な金融政策は、公定歩合などの短期金利を操作することによって金利体系に影響を与え、長期金利は自然な動きに任せるものであった。それに対して、長短金利操作は、10年物国債の金利の変動許容幅に収まるように国債を買い入れ、短期から長期までの金利体系全体の動きをコントロールしようとする政策である。

90年代以降の長い間、日本銀行は恒常的なデフレ圧力に悩まされていた。しかし、伝統的な短期金利政策で金利をゼロにするだけでは十分でないので、主要手段を長期金利に変えて、金融緩和を継続しようと試みたのが、長短金利操作を導入した意図だった。

その効果はあった。国内の需要が供給を下回って投資が低迷し、さらに需要圧力が低下する低圧経済から、供給能力よりも需要が上回って投資が活発化してさらに需要圧力が高まる高圧経済へと転換していった。第2次安倍内閣発足の2012年末からコロナ禍が起こる前の19年秋までで、ほぼ500万人の新しい雇用創出が可能になったのである。国内投資も振興することにより、生産性の向上にも役立った。このように長短金利操作は一定の役割を果たしたのである。

金融の繁栄と金融技術資産の背景に関するビジネスハンドシェイク
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実力のある企業が育つにつれ、企業が社債やコマーシャル・ペーパー(短期資金の調達を目的とし、割引形式で発行する無担保の約束手形)を発行して、良い条件で自ら資金繰りをすることが可能になる。社債や国債の市場価値が、市場で決まる利子率によってどのような影響を受けるのか。重要なのは「金利が上昇すると、社債や国債の市場価値は減少する」という経済の原則である。

近年のアメリカにおけるバイデン大統領の財政拡張政策は、新型コロナ禍で働き場所を閉ざされて苦しんだ国民のためには、必要な政策であった。しかし、20年、21年の財政赤字が、それぞれGDP比率で15%、12%という財政拡張ぶりは、支出や赤字の規模が大きすぎたきらいがあった。需要刺激が強すぎた結果、21年12月の米国消費者物価上昇率は前年同月比の7%に跳ね上がった。

そのため、FRB(連邦準備制度理事会)が金融引き締めに回らざるをえず、22年3月から金利の引き上げを開始した。当初0.25〜0.5%だった短期金利は、直近で5.3%にまで上がっている。この予想外の金利引き上げのあおりを受け、債券価格は下落していった。昨年、シリコンバレー銀行やシグネチャー銀行など、米国で銀行破綻が起こったのは、「将来、金利が安くなるだろう」との誤った見通しのもとに長期債券に過剰な投資をして、その価格が下落したため経営困難に陥ったものと考えられる。

米国の金利引き上げは、日米間の金利格差を拡大させ、日米の為替レートにも影響を与える。変動制の下、日本の金利がゼロで、米国の金利が5%であるとすると、円をドルに替えて利ザヤが稼げることになるので、円売りの裁定行動が起こる。つまり、市場としては円安が続くのが自然ということになる。昨年、円ドルレートが150円を超える円安になったのはこのような事情による。