好き勝手に暮らしているから免疫機能が高い

糖尿病も高血圧も心不全も検査上での病気ですが、2020年に帯状疱疹たいじょうほうしん、2021年に五十肩をやったくらいで(これも当座はかなりつらかったが)、なぜか風邪もひきませんし、PCR検査で陽性になったことは3度ありますが、これだけの基礎疾患があるのにすべて無症状でした。

好き勝手に暮らしているから免疫機能が高いのだろうと信じています。

そして、いつも周囲の人に言われるのですが、歩くのは速い。青信号が見えるとすぐに走ってしまう。自分でも心不全とは思えません。

歩行者用信号機
写真=iStock.com/laymul
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周囲のお世辞を真に受けているのかもしれませんが、見た目も若いようです。確かにずっとボツリヌス毒素(ボトックス)の注射はしていましたが、コロナ禍になって3年ほどやっていなくても、なぜかしわができません。

私が、健康というのは検査データが正常値を指すことではないと主張できるのは、たくさんの高齢者を診てきたことだけが理由でなく、自分の肌感覚からそう言えるからなのです。

5年後10年後はわからないから今の幸せを大切にする

とはいえ、これだけの異常値を実質放置して、好きなものを食べ、ワインを毎日飲む暮らしをやめないのですから、今はよくても、5年後、10年後のことはわかりません。

平均寿命まで生きられないことや、腎臓を悪くして透析を受けるなどということも十分あり得る話です。

実は、私はこの暮らしを、自分を使った人体実験のつもりで続けています。

「フィンランド症候群」という言葉があります。フィンランド政府保健局が首都ヘルシンキ在住の40~55歳の男性で、心臓疾患系の危険因子を抱え、生活習慣が似ている1222人を対象として、15年にわたって行った調査研究のことです。

被験者の男性を二つのグループに分け、一方には「高血圧対策の投薬や生活指導などの介入」を行い、もう一方には「なにもせずに様子を見守」った。その結果、生活指導の介入を行ったグループのほうが、死亡率や自殺率等が高かったというのです。

この話には異論もありますが、私は長年の高齢者の臨床経験から、検査データの異常値より心理的ストレスのほうが体に悪いと信じるようになりましたから、この結果にうなずけます。

ただ、日本で同じような研究はなされていません。強いて挙げれば財政破綻で市民病院が閉院になり、総合病院がなくなった北海道夕張市で、かえって三大疾患の死亡率が下がったという事実があります。

いずれにせよ日本では血圧や血糖値を下げることで寿命が延びたり、病気が減ったりするという大規模な比較追跡調査はありません。欧米のデータを鵜呑うのみにしているだけで、彼らと日本人とでは生活様式も食生活も疾病構造もまったく違います。

どちらが正しいかわからないなら楽で気分がいいほうがいい、ということに私は賭けて、自分を使って実験をしているわけです。

この答えは20年くらい経たないとわかりませんが、信じているから自分でできるのも確かなことです。