社交を絶やさず、脳を若々しく保つ

ほかに私が心がけていることといえば、脳を若々しく保つことです。そのひとつが、前頭葉を使うことです。

コロナ自粛に反対したり、ウクライナ戦争の報道姿勢が偏っていないかと提起したりするのも、人が言っていないことを考えることが前頭葉にいいという信念のもとに行っています。

テレビの重罪』(宝島社新書)、『マスクを外す日のために』(幻冬舎新書)などの本を立て続けに出したのも、自分の前頭葉のトレーニングにもなるはずだし、読者にとっても前頭葉を刺激するはずだと信じているからです。

前頭葉を使うという意味では、私の場合、コロナ禍でも社交を絶やさないようにしていました。頻度は減りましたが、ワイン会はずっと続けています。

いろいろな人と会って話すことの脳への刺激は、格別です。

たまたま、本が売れて珍しく経済的に余裕のある状況になっていますが、前から欲しかったワインを次々に買うので、貯金が増えません。

ハングリーなほうが働く気になりますので、今の状況は私にとってちょうどいいと思っています。ワインのコレクションが心を豊かにしてくれますし、いつ誰と飲もうかを考えるとワクワクすることもできます。

人に相手にされ続けることが、私にとって最高の健康法

自分自身、多くの人の老いざまを見てきたおかげで、「こんなトシヨリにはなりたくない」「こんなトシヨリになりたい」というイメージが、50代くらいからだんだん固まってきました。実は、それを2022年5月末発売の『老いの品格』(PHP新書)という本にまとめました。

私が本に書いているのは、自分が実践していることより、努力目標である場合が多いです。たとえば『感情的にならない本』(新講社)という本がベストセラーになりましたが、自分が感情の起伏が激しいことを自覚していましたので、努力目標として書いた側面が大きいのです。

『老いの品格』にも、自分の努力目標、自分がなりたい高齢者像を書いています。結論的には、私にとって老いの品格とは、品がいいこと、賢いこと、面白いことです。

品がいいというのは、自身の老いを素直に認め、ジタバタしたり、不安に振り回されたりせずにおおらかに生きることです。そういう人は妙なオーラを醸し出し、それが品のように思われるのです。

賢くというのは、物知りということではなく、酸いも甘いも噛み分けてきた人ならではの発想ができることです。

和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)
和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)

世の中、理屈通りにいかないということを人生経験で知ってきた人なら決めつけもしませんし、多様な考え方ができるのです。そういう賢さを私も身につけたいものです。

日本は同調圧力が強く、意見や世論が斉一化しやすい社会ですが、高齢者が人生経験から世論とは違ったことを言えると面白いと思われるはずです。

人が話を聞きたがるのは、そういう面白い高齢者だと信じていますので、私もなんとか人様に面白いと言われるようになりたいし、面白くなくなったと思われないように努力するつもりです。

人に相手にされるようなトシヨリであり続けることが、私にとっての最高の老化予防法なのです。

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