「もうしないと約束して」は言ってはいけない

傷を処置しているときに、「もうしないと約束して」という言葉がのど元まで上がってくるかもしれませんが、そんなときに思い出してほしいのは、「その子は自傷をすることで自分を保っていたかもしれない」ということです。自傷によって自分をなんとか保ってきた子に対して、「もうしないと約束をさせる」ということは、「その子の頼みの綱をその場で切る」ということでもあります。だからこそ、自傷したことを責めるのは避けてほしいのです。

では、自傷を肯定するのかというと、そうではありません。その子自身も自分を傷つける行動が長期的に見てよい対処方法ではないことくらいわかっています。なので、自傷について話した最後に、このように伝えてみてください。「もしまた、自分を傷つけたくなったときは、今ここで話したことを思い出してほしい」と。そして、またいつでも傷を見せに来たり、自傷した跡について話ができることを保証してあげましょう。

重要なのはその場での解決ではなく頼れる相手になること

もうひとつ、みなさんには「誰にも頼らない」という自傷もあるということを知っておいてほしいと思います。自分の傷を見せたときに不快感を示す大人や、もうしないという約束を強引に交わそうとしてくる大人と出会ったとき、子どもは「誰に頼ってもムダ」という信念を強めることでしょう。これはつまり、親や友達などの「人」ではなく、カッターナイフや市販薬などの「物」に頼ることを選択しやすくなるということです。

こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)
こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)

これを防ぐためにも、子どもが自傷を告白しに来たときには、前述のように「よく来てくれたね、傷を見せてくれてありがとう」と伝え、ていねいに傷を処置するという対応を取ってほしいのです。何よりも大切なのは、その場での強引な解決ではなく、次もまたその子が来てくれることです。

最後に、もし止血できないほど傷が深かったり、過量服薬(オーバードーズ)など身体的な医療処置が必要な場合には、救急外来のある病院を受診する必要があります。そうでなければ、精神科を受診することを考えてみてください。子どもを受診させる際には、「あなたは今調子が悪いから受診しよう」といった一方的な伝え方ではなく、「あなたが心配だから、受診をしてほしい」と自分が心配していることを伝えてください。

そして受診の際には必ず大人が付き添ってくださいね。

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