「もうダメだ」とさじを投げた母親

最終的に彼は「今度こそ本気で医学部受験に専念します」「ここなら自分は変われる。京都医塾で変わりたい!」と決意を語りました。今までのこともありお母さまは、半信半疑の様子でしたが、彼は私に向かって「今日でゲームは封印します。医学部に合格する日まで」と自ら約束をし、「明日から京都医塾に来ます」と告げました。そして本当に引っ越しも待たずに、翌日から京都医塾に通い出し、必死で勉強を始めたのでした。

しかしいよいよ寮へ引っ越しの荷物が届くというその日、お母さまから電話がありました。

「先生! 入塾をやめます! 引っ越し業者もキャンセルしました」

明らかに興奮したお母さまに、塾長が事情を尋ねてみると、「あれだけ先生に約束したにもかかわらず息子は寮にゲームを持っていこうとしているんですよ。それも全部! 家の中にあったゲームがすっからかんなんです。また、裏切られました!」とのこと。お母さまは「もうダメだ、この子は変わらない」と思い、医学部受験をあきらめさせることまで考えられたようです。

実は「本気の覚悟」でゲームと決別していた

ただ、塾長は彼が「京都医塾に入って本気で医学部を目指す」と決めたあの日から、話し方も目の色も変わってきているのを感じていました。そんな彼がなぜ?

何か理由があるのかもしれないと思い、彼の自習している個人ブースに行って、直接本人と話をすることにしたのです。そのとき、彼は塾長に対して、このように話してくれました。

「京都医塾で変わりたい。ゲームは合格まで封印すると決めたから、すべてのゲームを段ボールに入れ、ガムテープで封をして父親の書斎に隠してある。嘘か本当かは確かめてもらえればわかるけれど、いちいち母親に話すのは面倒だった」

事実、お父さまの書斎には本人が隠したというゲームがすべてありました。寮に持っていこうとしていたのではなく、彼は医学部合格のために「本気の覚悟」を持ってゲームと決別しようとしていたんですね。実際に次の春、すっかり生活面でも精神面でも、もちろん学力面でも「別人」となった彼は見事医学部に合格して進学しました。