人生を味わい尽くすにはどうすればいいか。プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんは「ぼくが目指していたのは、自分の専門であるスキー、登山、冒険という分野において、世界でまだ誰もやらなかったこと、できなかったことを、一生をかけてやってみたいということだ。そうした夢を抱き続けていると、必ず後押ししてくれる人が現れ、それを達成できたら、満足感を分かち合えるというのは、人生の醍醐味である」という――。(第1回/全5回)

※本稿は、三浦雄一郎『90歳、それでもぼくは挑戦する。』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

エベレストのイメージ
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世界でまだ誰もやらなかったことをやる

夢。

これはもう若いころからたくさん抱き続けてきたものです。それぞれの年代、それぞれの時代ごとに、「これができたら最高だ」と思えることを頭に描いて、準備して、それに向かって夢中になって取り組む。それがぼくの生き方でした。

ぼくが目指していたのは、自分の専門であるスキー、登山、冒険という分野において、世界でまだ誰もやらなかったこと、できなかったことを、一生をかけてやってみたいということです。その夢を抱いて以来、それを一度も失ったことがありません。夢を失ったら、ぼくはなんのために生きてきたのか、わからなくなってしまうからです。

1970年5月、スキーとパラシュートをつけて、エベレストの8000m地点から飛び出して滑降する、という、当時、世界でもっとも標高が高い地点からの本格的なスキーによる滑降をして以来、どこへ行っても、誰と会っても、「次は何をやるのですか?」と必ず聞かれ、そのたびに「次は南極を滑ります」と口にしました。

地球上で一番高い山から滑り降りたら、次は地球上で一番巨大な氷の世界に行き、スキーをしてみたい――。雪と氷に覆われた大陸だから、高い山があればスキーはできるはずだ。そう思ったのです。