「手作り・自然派」は高度な知識と技術が必要

とはいえ、これは特殊な事例とは思えません。問題となった店は住宅街にあり、ソーシャルメディアで「高校生の息子が手伝ってくれた」というエピソードを披露していました。多くの女性にとって、憧れのライフスタイルだったのではないでしょうか?

家庭での手作り趣味をもっと極めていつかはお店に……と夢を語る人は少なくありません。竹谷さんも「最近、女性からそういう開業相談をよく受けるんですよ」と語ります。

しかし、そう甘くはない。手作り・自然派で特徴を出していこうとすればするほど、原材料に対する豊富な知識や調理場での入念な衛生管理、職人としての高度な技術と経験が求められます。それがなければ、消費者に安全で品質のよい食品を安定して届けることができません。家庭の延長線上の意欲だけでは通用しません。

工場で作ったほうが食中毒リスクは低い

買う側の消費者も、気をつけたほうがよいことがあります。

無添加とか手作りという言葉に惑わされていませんか? 小さなお店のほうが高品質、良心的、などと思い込んでいませんか?

食品衛生管理のレベルから言えば、概して大企業が上です。食品事業者には法律に基づき「HACCPに沿った衛生管理」が事実上、義務付けられているのですが、大規模事業者は高度な方法をとらなければなりません。一方、小規模事業者は、より簡便化した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」をすればよいことになっています。

人間は雑菌だらけの生き物なので、機械化が進み人による作業が少ない工場のほうが、微生物の食中毒リスクは低くなります。また、冒頭で書いた通り「無添加だから安全」は間違い。消費者庁は「食品添加物の不使用表示ガイドライン」を策定しており、根拠がないのによいものと見せかける無添加・不使用表示は、優良誤認を招き基準違反となる可能性がある、としています。

消費者も見極めが必要なのです。購入したらパッケージに書かれている保存方法や消費期限・賞味期限を見て守りましょう。開封後は、これらの期限は無効となりますから、なるべく早く食べ切りましょう。

街場の小さなお店で、食品の製造と販売を同一場所で行なっているところは、個々の製品への表示はしなくてもよいことになっています。対面で詳しく説明できるためです。疑問があったら「これはいつまで日持ちしますか?」「どこに保存したらよいですか?」と尋ねましょう。

参考文献
日本パン技術研究所おいしいパンの百科事典・パンの微生物汚染とイーストによる日持ち向上効果
食品分析開発センターSUNATEC・Bacillus属細菌による食品の変敗と防止技術(愛知学泉短期大学食物栄養学科、内藤茂三教授)
厚生労働省・食品衛生申請等システム
消費者庁・食品添加物表示に関する情報

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