ガラパゴス化をたどる可能性大の日本版ライドシェア
過疎地だけでなく、都市部でもタクシー不足が大きな社会問題となっている。この問題を放置すれば、私たちが乗りたい時、道路で拾いたい時にタクシーがいつまでも来ない……といった不便極まりない事態になりかねない。
これを補うために、一般のドライバーが自家用車を用いて乗客を有料で運ぶ「ライドシェア」の解禁論が高まってきた。客を奪われると見てタクシー業界はこれに強く反対し、むしろタクシーの規制緩和(時代遅れの地理試験の廃止や、意味のない二種免許の改善など)が先決としてきた。だが、岸田文雄首相も、「年内をめどに方向性を出す」と表明した。
こうしたなかで年末を控え、政府によるライドシェア解禁の具体的な内容が明らかになってきた。それが「タクシー会社による一般のドライバーの雇用を前提」とした解禁という、他国に例のないものだ。
このような奇妙なガラパゴス化をたどる可能性が高いライドシェアの導入は、本来の制度改革からほど遠い内容だ。従来から反対してきたタクシー会社にとっては、競争相手となるライドシェア運営事業者を排除できるだけでなく、自らの運転手不足を部分的に緩和できるなど、ほぼ満点に近い内容といえる。いかにも既得権益に配慮した日本的な解決方法である。
しかし、このような中途半端な妥協案で、本当に日本で諸外国並みのライドシェアが普及し、交通難民問題は解決できるのだろうか。
過疎地のライドシェアの拡大
このライドシェアは、政府の定めた国内の交通空白地では、「自家用有償旅客運送」という特例の形で、既に実現されている。しかし、以下のような制約を改善しなければ、さらなる普及は困難といえる。
第1に、「交通空白地」の定義が、「半径1km以内にバス停・駅がなく、タクシーが恒常的に30分以内に配車されない地域」と狭く、バス停さえあれば一日に数本だけでも除外される。
第2に、運送の対価としてタクシーの8割以下とすることになっているが、これには合理性が欠けている。
第3に、運送事業者も含めた地域公共交通会議での合意が必要となって、タクシー会社に事実上の拒否権がある。
最後に、運送の主体となるのは市町村かNPOだけで、タクシー会社以外の企業などは排除される。これらのタクシー会社に配慮した現行の規制を緩和し、市町村弾力的な運用ができる方式に改めなければ、この制度の普及は進まない。