プロでも試行錯誤する難しいマフィンだった
竹谷さんは「シンプルなマフィンを作る場合、普通に砂糖を配合すれば、保存料や日持ち向上剤を用いずとも室温で1週間ぐらいは軽く日持ちし、おいしく食べられるものを作れますよ」とこともなげに語ります。
「もし、砂糖を半量以上減らしてフルーツや栗がごろごろ入った自然派マフィンを作ってほしい、と依頼されたらどうしますか?」と尋ねてみました。竹谷さんはうーんと唸りました。「生のフルーツや栗がごろごろ入って、というのは断ります。毎回、同じように作れる自信がない。フルーツはジャムにしましょう、栗は甘露煮に、と交渉しますね」。そのうえで、具材を変えるごとに試作を重ね、加熱温度や加熱時間を決めなければならず、製品化に相当な手間と時間がかかります。
指導する立場の専門家ですら尻込みするような難易度の高いマフィンを、その難しさに気づかず作っていた、というのが、今回の食中毒事故の背景のようです。
「重篤な健康被害、死亡原因になる可能性」
問題の店は、厚生労働省に14日、自主回収の届出をしておりその情報が公開されています。対象は、フェスで売った約3000個。健康への危険性の程度は、もっとも高い「CLASS I」です。これは、「喫食による重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合」とされています。
ちなみに、この店は表示にも問題がありました。添加物であるベーキングパウダーを使っていたのに、無添加とうたっていましたし、原材料として水を表示していました。海外では食品表示に水を入れなければならない国が多くありますが、日本の制度では、水は表示しません。全体に知識不足であったことがうかがえます。