円安基調で製薬、小売、インバウンド需要も回復

2024年3月期、国内の上場企業の純利益は前年度から増加し3年度連続で過去最高を更新する可能性は高い。

主力の自動車産業では、円安の追い風もありハイブリッド車の販売増加などで業績が拡大した。車載用半導体の供給が正常化したことや、円安基調が続いたことは大きい。産業の裾野の広い自動車メーカーの業績拡大は、国内の部品メーカーや機械、素材、半導体などにも増収効果をもたらす。

製薬分野では、ワクチンや認知症治療薬で世界的に高い成果を上げる企業が出始めた。これまでの研究開発や、海外での大型買収の成果が徐々に成果に表れ始めた。非製造業や食品などの分野でも収益力は高まった。

また、一時、インフレ圧力が高まったこともあり、多くの企業がコスト増加分を販売価格に転嫁する動きが出てきた。食品、小売など多くの分野で、消費者の満足度向上と値上げが同時に進んだ。消費者の声に耳を傾け、必要とされるモノやサービスを供給する企業が増えたことも確認できる。インバウンド需要の回復も飲食、宿泊、交通などの分野で企業の収益を支えた。

東証の“異例の声明”もあった

企業を取り巻く環境も変化した。2023年3月、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」を出し、企業の経営体質の転換の促進を図ったことも見逃せない。東証は、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して、どのように収益性を高めるか方策を提示、説明、実行するよう求めた。

PBRが1倍を下回る企業の株価は、一株当たりの企業の解散価値を下回っていることを意味する。ファイナンス理論で考えると、当該企業は即刻、業務を止めて解散するほうが有利ということになる。

東証の要請をきっかけに、政策保有株の売却、賃上げや人材への投資を強化し、成長戦略を強化する企業は増えた。それは企業の事業運営の効率性向上に寄与したといえる。