稼ぐ力を高めるために早急なEVシフトは欠かせない
今後の日本株の展開を予想する上で注目すべきは、企業が“稼ぐ力”の向上を維持できるか否かだ。これまで世界経済を牽引してきた米国は、利上げなどによって徐々に労働市場の改善ペースが鈍化しつつある。中国経済は、不動産バブル崩壊で成長率が一段と低下する恐れが高まった。
米大統領選挙や中東情勢も、先行き不透明感を高める。短期間で世界経済が大きく後退することは想定しづらいが、投資家がリスク回避的な行動をとりやすい環境になるリスクは上昇している。
そうした中でも、わが国の株式市場が安定した展開になるためには、わが国企業は“稼ぐ力”をこれまで以上に高めることが必要になる。その点に関して楽観は禁物だ。
わが国が得意とする世界の自動車産業では、BYDなど中国勢の台頭が鮮明化した。2023年、中国に抜かれて、わが国は世界最大の自動車輸出国の地位から滑り落ちた。EVシフトへの遅れの深刻化は、他の産業にも負の影響を与える。
完全復活を目指す日本に必要なものとは
わが国企業は、EV、半導体、バイオ医薬品など需要拡大期待の高い分野で研究開発、生産体制を強化できるか否かが問われる。わが国企業は新しい需要創出に向けて事業展開の効率性をこれまで以上に高める必要がある。そのためには、なんといっても優秀な人材の育成・確保が必須の条件となる。
企業が新しいモノやサービスを創造し、より高い収益を獲得できるか否かは人材にかかっている。既存の従業員の学びなおしのための投資も欠かせない。成長戦略の立案と実行を支える専門家人材の確保の重要性も増す。
足許、わが国企業の中にも、そうした取り組みを強化して、業績拡大を目指そうとする企業は徐々に出始めている。日本製鉄によるUSスチール買収や、ホンダによるカナダなどでのEV工場建設の表明はその嚆矢に見える。長期的な視点で収益力の向上に取り組み、その成果を着実に実現する企業が増えれば、少し長い目で見ると、日本株の上昇余地はあるはずだ。