学童保育指導員の仕事は「見守り」だけではない
もう一つ、学童保育の現状について知るべきことがある。施設での子どもたちの生活時間に関わる、学童保育指導員(放課後児童支援員)の働き方と待遇だ。
放課後という限られた時間を対象とすることから、指導員の仕事は短時間で、単純な「見守り」と想像されがちだ。しかし実際はそうではない。1年生から思春期に入り始めた年齢まで、子どもたちが安全で楽しく通い続けられる「生活」と「遊び」の内容を子どもとともに作る、休憩やおやつなど支援をする、それを包括的に考えた指導計画の作成、生活記録に保護者との連絡、保護者の子育て支援……と多岐にわたる。
だが、その業務に見合った人数の配置と待遇が、現状ではかなっていない。
「2015年に施行された国の基準で、子ども集団の規模を『おおむね40人以下』とする『支援の単位』と、その子どもたちを見守る大人の数を『1単位につき2人以上』とすることが決められました。子どもにとっての生活の質を考えれば十分ではありませんが、市町村ではさらに、これを下回った水準で基準を作ることがあります。また国が積算する人件費の補助単価は『平日1日6時間勤務の非常勤職員』を前提にしており、業務面でも待遇面でも、フルタイムでの正規雇用は想定されていませんでした」
学童保育の仕事だけでは生計を立てられない
学童保育の改善のために実態調査と提言を続ける全国学童保育連絡協議会をはじめ、関係者・保護者の陳情や要望を受け、2015年・2022年と、指導員の処遇改善を目的とした補助金が国の予算で計上されている。それでも賃金や社会保障などの面では、他の職種に比べて脆弱だ。今も1日4〜5時間勤務での、嘱託や会計年度任用職員が多い。
「東京都の文京区など、フルタイムの正規職員としてきっちりと雇用する体制ができている自治体もありますが、日本全体の中では一部。『この職業一本で生計を立てたい、食べていきたい』と願う人が雇えるような、労働市場が形成されていないのです」
正規雇用の少なさが影響し、福祉・教育系の大学から新規学卒者としての就職活動を経て専門家として指導員になる人は、限られた地域にとどまる。現在の学童保育は、定年退職後に放課後指導員資格を得たシニアや、結婚や出産を機に退職した保育系有資格者のパートでの再就職に支えられている。