広告代理店で紅一点ながら、トップセールスに
高橋さんはその後、親戚での生活から東京に戻り短大を出た。姉が短大を出してくれたのだという。
短大卒業後、広告代理店に勤務。高橋さんは自分から希望して、営業職に就いた。社員57人中、女性は1人。そこで、トップセールスを記録する。1960年代当時、決して、女性が働きやすい時代ではなかったはずだ。
「とにかく、何でも楽しんで仕事をすれば、いくらでもできる。売れない、できないという方向ではなく、トランプだって52枚の中にエースは必ず4枚あるのだから、52件も回らないで、できないと決めるのはおかしい。こんなふうに考えて仕事をしていると、どういうわけか、みんな、うまくいくの。見返りを求めない、損得を考えない。まずは気持ちが大事。お金の力ではなく、人間は感情の動物だから、心の力を動かすこと。相手が喜ぶであろうことを、一生懸命にしてきただけ」
悔しい気持ちは川柳にぶつけた
会ってくれた人には、その日のうちに礼状を書く。きっと、そのほうがうれしいだろうから。そうやって、相手に喜んでもらえるように努力した。営業の現場では時に、つらいこともある。
「意地悪をされたり、見下されたりすると、私もあなたを見させてもらっていますよという気持ちで、川柳を作っちゃう」
その川柳が、これだ。
「見知らぬセールスマンに見せる素顔こそ、その人の素顔なり」
嫌なことも、川柳にして楽しんだという高橋さん。負の感情に囚われることを徹底して避け、笑いに転じた。
「そうすると、こういう人にならないように気をつけようと思うでしょ。だから、人生のお手本探しって考えていくと、営業はつらくはない。そうやって営業の成績が上がると、今度は飛び込み営業が趣味になっちゃう」
人と出会うことこそ、営業の現場だ。それこそが、高橋さんにとっての学びとなった。
「自分のお手本探しだと思ったら、どんな相手とでも楽しく話せる。そこで気づいたのは、営業というのは物があってもなくても、人の心を動かすことができたら成立する。私は全て、人から学ばせてもらったんです。飛び込みをすれば、いろんな人に会えるし、いろんな人から学ばせてもらえるし、やはり、人の顔を見て、人の心が動いて、それで決まった仕事は大事だと思いました」
心の力、それは今のおせっかい協会の活動にも通じるものだ。