セグメンテーションは居住地や年齢、収入などの地理的変数・人口動態変数で切りわけていくことが多いが、これだけでは本当の市場は見えてこない。

例えばグッチとユニクロの愛用者の収入を比べても、ほとんど差がないかもしれない。若い女性が高級ブランドを身につけることは珍しくなく、逆にお金に余裕のある層が、数回着ることができれば十分とばかりにファストファッションに身を包むケースもある。そのため最初は一般的な属性で切りわけるとしても、何らかの仮説を立ててリサーチを行い、その結果を見ながらセグメントを組み直す必要がある。仮説・検証を繰り返すことで、声を聞くべきセグメントが浮かび上がってくるのだ。

リサーチで注意したいのは、その層が抱える不満ではなく、“生活ストーリー”を聞くことである。消費者は自分のニーズを的確に把握しているわけではない。そのために重要なのは、具体的な生活の流れを聞くことだ。朝何時に起きるのか、どのような食事を好むのか、休日は何をして過ごすのか……。それらをヒントに開発し、こちらから提案するのだ。

生活ストーリーの中からコンセプトメーキングされた代表的な商品がアップルのiPodである。iPodは携帯オーディオプレーヤーへの不満点を改善して生まれたわけではない。

アップルが声を聞いたのは、熱烈な音楽ファンだった。彼らは、いつでもどこでも、そのときの気分に合った音楽を聴きたい。しかし、従来のウォークマンのような商品では、電子機器とともに大量のCDを持ち歩く必要があった。そこでアップルは、大量の音楽データをコンパクトに持ち運べる商品をつくろうと考えたのである。

まずは、リサーチの対象となる顧客を絞る。そのうえで、彼らの生活習慣を具体的に調べていく。ヒット商品づくりの基本はここにある。

(構成=村上 敬 撮影=市来朋久)
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