現在、身の回りのITサービスはGAFAMと呼ばれる巨大IT企業が独占している。日本企業が逆転するにはどうすればいいのか。経営戦略コンサルタントの鈴木貴博さんは「日本のメーカーが勝ち筋を作るチャンスはある。それはAIをキャラクター化した『アイドル家電』を作ることだ」という――。

※本稿は、鈴木貴博『「AIクソ上司」の脅威』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ポケモンセンターのピカチュウ
写真=iStock.com/pius99
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AIの進化はスマート家電を劇的に変える

生成AIがあらゆるビジネスを変えていく未来では、当然のことながら私たちの家庭生活も大きく変わっていくと予測されます。

徐々に始まっている家電のスマート化として、たとえば最近では、エアコンのスマート化が挙げられます。外出中にエアコンが誤作動を起こして火事になるのではないかといった危険性から、実用化にかなり時間がかかってしまいましたが、家を出る際にエアコンや暖房を切り、帰宅したら寒いないしは暑い部屋で冷暖房のスイッチを入れるのが当たり前だった生活は、このスマート化により大きく変わりました。

また他にも、勤務先などから自宅のペットや子どもたち、遠く離れた家に住む後期高齢者の家族などの様子を見守れる遠隔カメラも実用化されてきています。しかし、実際はそれほど普及していません。なぜなら、プライバシー問題や、ハッキングの危険性をまだ解消できていないからです。

このようにスマート家電は、技術的にはすぐにでも実現できそうだと言われていましたが、心理的や法律的な理由からなかなか実現できていませんでした。ところがAIの進化により、その状況が一気に変化しつつあります。

10年後の皆さんの家の中は、現在からは想像できないほどの進化を遂げた空間に変わっているでしょう。

生成AIを使って仕事をするのが当たり前になる

まずこの先、早い段階で私たちの日常生活に入り込んでくるのが、マイクロソフトの「コパイロット」です。コパイロットとは、副操縦士の意味で、新しいウィンドウズ11に搭載された以外に、検索エンジンのBingにも搭載される予定ですし、オフィス365にも月額30ドルの有料前提ですが搭載されることになっています。このコパイロットは、マイクロソフトが資本提携をしているオープンAIのChatGPTが製品のベースになります。

多くの人が仕事でパソコンを使う際には必ずマイクロソフトの生成AIを使うようになりますし、2030年になれば、家庭で使っているパソコンでも普通に使うことになるでしょう。

それに対抗するのが、グーグルとアマゾンです。

グーグルは、グーグルカレンダーやグーグルマップなど、マイクロソフト製品とは別のジャンルのアプリで高いシェアを持っているため、やはり仕事で使うのに便利な生成AIサービスを展開できます。グーグルが資本参加しているユニコーン企業の、アンソロピックが仕事用途でChatGPTよりも便利な生成AIを開発できれば、有料のマイクロソフトよりも、無料のグーグルがより優位なポジションを占められる可能性があるでしょう。