1日10分でもいいから自分の頭で考えよう

楠木 競争の戦略の分野でもそれはよくありますね。僕は一般的に「ベストプラクティスを探せ」みたいなものに非常に批判的な立場なんです。そんなものでいい経営ができるわけないと。ただ、やっぱりそういう型みたいなものを欲しがる人がユーザーとして多いわけです。ビジネス誌などをみていてもワンフレーズで勝ちパターンみたいなものを言い切ってしまうような記事がよくあります。いちばんありがちなのがIT系の必殺技。ちょっと前だとソーシャルとかクラウドとかで、いまだとビッグデータですね。ほとんど供給側の事情でそういうことにしてしまっているように、僕は思うんですよ。で、なんで日本企業がここ20年で競争力を失ったかというと、「やっぱり農耕民族だからですね」とか、また一言で言い切ってしまう。そんなわけないだろうと。

©Takaharu Shibuya

僕は理屈というものの基本は、因果論理だと思います。「なぜ?」という問いに対する自分なりの解釈、理解なんですよ。○○の法則とかいう前に、自分の頭で1日10分でもいいから考えてみないことには、相場のセンスも戦略のセンスも磨かれないと思うんです。広木さんは、さきほど情報はいかに早いかで勝負するのではなく、いかに誰も知らないことを知るかでもなくて、要するにどう解釈するかだとおっしゃいましたが、その解釈のセンスを磨くためにやっておられることってありますか?

広木 私は器用ではないので、やっぱり時間をかけることですね。楠木先生は1日10分でもいいとおっしゃいましたが、まさに継続は力ですから、毎日の10分が、週5日、働けば、1時間近くなりますから、そういうものを積み重ねていくということでしょうか。最初のうちは質より量だと思うんです。考える量ですね。量をこなしていくうちに、だんだん質が伴ってくるということだと思うんですね。忙しいなかで、いかに考える時間をつくり出すか。

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(撮影=澁谷高晴)