特に注意すべき漢方薬「防風通聖散」
最後に、特に注意すべき漢方薬をご紹介します。
それは「防風通聖散」です。
防風通聖散には、ここまで紹介してきた「甘草」と「大黄」に加え、「山梔子」が含まれています(この記事では紹介しきれませんが、ほかに「黄芩」と「麻黄」も副作用の面で「いわくつき」の成分です)。
山梔子は長期にわたって飲み続けると、「腸間膜静脈硬化症」という副作用をもたらすとされます。
厚生労働省によれば、「腸間膜静脈硬化症」で腸を切り取る手術が必要になった例もあるとのことです。
そのため、長期間にわたり服用する場合は、定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うこと、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれた場合には特に注意すること、とされています。
「ダイエット目的」で飲む人は注意が必要
防風通聖散の効能・効果は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」とされています。
ダイエット目的の人に人気があるのか、別の商品名のものを含め20種類以上も出ています。
偽アルドステロン症を起こす甘草。大腸メラノーシスを起こす大黄。腸間膜静脈硬化症を起こす山梔子。
副作用をもたらす成分を3つも含んでいる「防風通聖散」は、なんと処方箋なしで買えます(というか、たいていの漢方薬は処方箋なしで買えます)。
まずは、もし「漢方だから大丈夫」とか「市販薬だから大丈夫」と思って名前も確かめずに飲んでいる薬が手元にあれば、パッケージの注意を一度読んでみてください。心配になったら店舗の薬剤師に相談することもできます。
とはいえ副作用があってもいいという気持ちで飲んでいる人もいるかもしれません。その場合も、何かあったら医療が助けるのは当然の義務です。筆者は薬を飲む人を責めたくはありません。副作用対策のために知識をつけろとか、知識がないなら医師や薬剤師に相談しろと要求することも一方的だと思います。
むしろ、ダイエットはいいことだとか、薬にはなんでもできるとか、漢方薬には副作用が少ないといった空気を温存してきた人たちにこそ責任があると思います。
特に同業者として、医師には責任を持った処方と責任を持ったフォローをしてほしいと思っています。