漢方薬に含まれる「甘草」が副作用を起こす

偽アルドステロン症は、多くの漢方薬に含まれている甘草かんぞうが起こす副作用です。

より詳しく言うと、甘草の有効成分であるグリチルリチン酸が偽アルドステロン症を起こします(図表1)。

【図表1】グリチルリチン酸が偽アルドステロン症を起こす仕組み

アルドステロンというのは人体が自然に作っているステロイドホルモンの一種です。グリチルリチン酸はアルドステロンのような作用、たとえば血圧を上げ血中のカリウム濃度を下げるといった作用を引き起こします。

「ステロイドホルモン」の作用を強めてしまう

ステロイドホルモンという言葉が出てきました。ステロイドというのはあるグループの化学物質を指す言葉で、多くの物質がステロイドに分類されます。医薬品でステロイドと言えばふつう、アルドステロンとは別の、炎症を抑えて熱や痛みなどをやわらげるタイプの薬を指します。

人体内ではコルチゾールというステロイドホルモンがこの作用を持っています。ステロイド薬は、おおまかに言って、コルチゾールの作用をまねるように作られた物質です。

アルドステロンもコルチゾールもステロイドです。それぞれ機能は違うのですが、完全に異なるわけではなく、共通の作用を持っています。それが血圧を上げるとかカリウム濃度を下げるというものなのです。

ただ、体内では、コルチゾールが代謝されてコルチゾンという物質に変わることで、アルドステロンのような作用が抑制されています。

しかし、漢方薬の「甘草」すなわち「グリチルリチン酸」を摂取すると、その代謝産物が、コルチゾールからコルチゾンへの代謝を阻害してしまいます。

するとコルチゾールが過剰になり、アルドステロンのような作用も過剰になります。

これが「偽アルドステロン症」です。

簡単に言うと、漢方薬の代表的な副作用は、ステロイドの副作用とも言えるのです。