「お受験は子どものためになる」は本当か
中学受験をする子どもの数は、ここ10年ほどで増え続けています。2023年、首都圏の中学受験者は推定5万2600人(全体の17.86%)と、過去最多にのぼります。
中学受験をする子どもが増えた結果、受験のための塾に入ることさえ椅子取りゲーム状態となり、小学校1年生から塾に通わせるケースも珍しくありません。
さらに遡る形で「中学受験のために低学年のうちから塾通いさせるのはかわいそう。だったら早いうちにエスカレーター式の学校に入っておくほうが、そのあと伸び伸び過ごせるだろう」と、幼稚園・保育園で小学校受験の塾に通わせるご家庭まであります。
もはや「かわいそう」の基準がどこにあるのか疑問ですが、とにもかくにも「受験をしていい学校に入れば、それだけ就職先の門戸も開ける。子どもの将来の選択肢が広がるはずだ」と考えている方が多いようです。
ハードな塾通いは「からだの脳」に悪影響
しかし、幼少期からのハードな塾通いは、子どもの脳を育てるのに必須である「早寝早起き」の生活リズムを乱します。子育て科学アクシスにも、不眠や頭痛、腹痛といった症状に悩まされている、受験組の小学校4、5年生たちがたくさん相談に訪れます。
将来のためにと、毎晩遅くまで勉強に励んで志望校に合格できたとしても、それによって「からだの脳」に悪影響が及んでいれば、不安からくる摂食障害や不登校といった形で、大きなしっぺ返しに見舞われることになります。これでは本末転倒です。
また「あなたの偏差値であれば、この学校になら入れる」と塾から示唆された通りに受験し、いざ通ってみたけれど校風が合わないとなれば、その環境をつくった親を子どもは攻撃するようになります。
仮に大きなトラブルなく学校に通えたとしても、それが親の意志である以上、「お父さん、お母さんの言うことを聞いていれば、間違いない」という刷り込みがなされます。その結果、どんなに目の前に選択肢が広がったとしても、子どもが進む道を自分自身の意志で選び取ることは難しくなってしまうでしょう。
高校に入るには受験する必要がありますが、義務教育段階である中学受験までは子ども自身がそれを望み、親に「塾代や受験料を出してください」とお願いして初めてするものだというのが筋だと考えます。