「子どもの将来のために」と早期教育をする親が増えている。文教大学の成田奈緒子教授は「『からだの脳』がしっかり育つ前に『おりこうさんの脳』を育てようとすると、脳全体がアンバランスな状態となってしまい、中長期的に悪影響が出るリスクがある」という――。

※本稿は、成田奈緒子『誤解だらけの子育て』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

エリート家庭ほど早期教育に熱心になる

英語やリトミックに算数……。小学校就学前の幼児を対象にした早期教育が今、過熱しています。知育DVDなどの家庭用教材から教室まで、いわば一大ビジネスの様相です。

私が主宰する「子育て科学アクシス」には、最近では比較的高い学歴をもつ親御さんも多く相談に来られますが、特にエリート家庭ほど、その傾向が顕著だと感じます。

彼ら彼女らは、自身が学業に力を入れ、努力して学歴を手に入れてきたからこそ「わが子が成功するには、自分が与えられたのと同じような教育環境を用意してあげなければ」と考えがちです。そして、その過程では常に競争に晒されてきたため、わが子のこともつい周囲の子どもと比較してしまいます。

「ウチの子は3歳から○○を習わせている」などという話をネット上で、はたまたママ友から見聞きしようものなら、「わが家も早いうちから手を打たなければ」「負けていられない」などと、気が気ではなくなってしまうのでしょう。

英語教育
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いまの子育ては「絶対に失敗できない」

逆に、自分に学がないことをコンプレックスに感じているような親御さんの中にも、「わが子には同じ轍を踏ませまい」と早期教育に躍起になるケースが少なくありません。いわゆる「リベンジ型の教育」です。

いずれにしても、少子化が進み、ましてひとりっ子ともなれば、そこに向けられる教育熱は「絶対に失敗できない」という強迫観念と表裏一体になり、一身に注がれます。共働き世帯が増えた結果、子ども一人あたりにかけられる教育費が増加していることもあり、こうしたニーズに応える早期教育ビジネスが今や花ざかり、というわけです。

しかし、巷の早期教育プログラムで謳われている「脳が柔らかい3歳までに言葉の学習を進めるべき」「小学校で学ぶ内容を先取りすれば、子どもに自信がつき、学ぶ意欲にもつながる」といった言説は、脳育て理論的には間違っています。