大谷愛を強く感じた番組
――テレビ出演で大谷選手の人気の高まりを実感されたんですね。
【五十嵐】もともと朝や昼のワイドショーや報道番組で野球を取り上げる機会は少なかったですからね。そのせいで制作スタッフも野球についてさほど詳しくなかった。
当初は打ち合わせでも細かいことをいろいろと聞かれました。「今日の大谷さんどうします?」なんて抽象的な質問や、「そこから教えなきゃ行けないの」という初歩的な質問も少なくなかった。でも最近はスタッフの方も野球を分かってきたのか具体的な質問が増え、打ち合わせの時間がとても短くて楽になりました。
出演者の方々も野球を、というか大谷選手を好きになっていると感じます。熱量があるのは「ひるおび」ですね。番組のコメンテーターの八代英輝さんは、大谷選手の立場になって話をする。大谷選手ならいまはこんなふうに考えていそうだなと想像してコメントなさるんです。それがとても面白い。
司会者の恵俊彰さんは、理想の大谷選手像を持っている。2人のやりとりを聞いているとぼくも楽しくなってきます。大谷選手のドジャース移籍を知った瞬間、真っ先に浮かんだのが恵さんと八代さんの顔でした。あとで聞いたら、恵さんと八代さんも、大谷選手の移籍についてラインでやりとりしていたそうです。
野球界への貢献は計り知れない
――野球人気をテレビ出演以外で感じることはありますか?
【五十嵐】野球人気というよりも大谷選手人気ですね。サウナに入っていると、おじさんたちが大谷選手の話をしているんですよ。聞いていると、野球というよりも、大谷選手にしか興味がないな、と。
プロ野球のOBとしては寂しい気もしますが、それでいいとも思っています。
大谷選手は日本の野球少年……いえ世界中の野球少年にとってのスーパースターです。WBCでの大谷選手の活躍をきっかけに野球に関心を持ち、大谷選手に憧れてメジャーの試合を観戦するようになる。そして野球を好きになり、グローブを持ち野球をはじめた人も大勢います。野球界にとって彼の貢献ははかり知れません。
先日、大谷選手が日本の小学校2万校に、3つずつ計6万個のグローブを寄贈しました。単純にグローブ1つが1万円だとしても6億円です。たとえドジャースとの契約で1000億円を手にしたとしても、簡単にできることではありません。
大谷選手は純粋に子どもたちに野球を楽しんでもらいたいと考えたのでしょう。二刀流だけではなく、そうした個性や考え方も含めて、1000億円を超える価値が、大谷選手にはあると感じるのです。
大谷選手は、子どもだけでなく、それまで野球を見たこともなかった女性たちの心もつかみました。大谷選手の活躍が、野球界の裾野を広げたと言えるでしょう。