「制度2年目の昨年の評価で昇格した社員が300人弱、降格した社員も100人弱いた。旧制度の年功序列で昇格した人がG4に落ちることもあれば、若手でG3に昇格し課長に登用された人もいる。一方、50代でもG5という人も多い」(新森部長)

もちろん降格しても実力しだいで這い上がるチャンスはあるが、評価が低いとG5の給与のまま永遠に上がらないことになる。

同社の報酬は月例給と賞与で構成されるが、月例給はグレードごとに決められた基本給1本。つまり昇格しないと昇給しない。グレード間の格差は基本給の1割程度である。賞与は基本賞与と個人業績給、それに会社業績給の3本で構成される。基本賞与はグレードごとに定額であり、会社業績給は会社業績結果で支給係数が自動的に決まり、それにグレードごとの基本給を乗じて算出される。つまりグレードが同じであれば、同じ額の基本賞与と会社業績給が支給される。

グレード内格差を生むのが個人業績給だ。個人の目標の達成度を0~40点の範囲内で点数化し(リザルトポイント)、本人が獲得した点数にグレードごとに設定された単価を乗じて支給額が決まる。単価はG5~1まで数万円から十数万円の開きがある。各部門の平均点を20点に設定しており、満点の40点は出ていないが、0点は発生している。

仮にグレード単価を10万円とすれば、0点と平均の20点では200万円の格差が開くことになる。

グレード内の格差も決して小さくないが、より大きいのはグレード間の格差だ。たとえば冒頭に紹介した42歳の新任部長はG2だが、同期にはG3~5まで存在する。グレートが違えば、グレード給に加えて基本賞与額、会社業績の算定基礎である基本給、個人業績ポイント単価が異なり、年収ベースではかなりの格差が開くことになる。実際に「旧制度では若手より高い年収を得ていた50代でも30代前半の社員と同じ年収という人もたくさんいる」(新森部長)というのが実態だ。

住友商事の成果主義はどちらかといえば昇進・昇格によって格差をつける仕組みといえるが、じつは収益率の高い会社は昇進・昇格に差をつけている会社と指摘するのは前出の高野社長だ。

「圧倒的に収益率の高い上場企業を抽出し、企業を訪問して調査を行った結果、これらの企業では給与に差をつけず昇進・昇格に差をつけていることがわかった。つまり、個人や1つの部門が努力したからといって会社全体の利益が出るわけではない。他のセクションとどのように連携するかといった全体最適を考えられる管理職の選任基準を明確にし、昇進・昇格に大きな差をつけることでやる気を引き出すことを重視している」

(ライヴ・アート=図版作成)