住友商事42歳の部長誕生

住友商事に08年春、1988年入社の部長が誕生した。同社の部長昇進年齢はかつては平均52歳と遅く、最近でも84年入社が最も若かった。それより4年も短い42歳を部長に押し上げたのは2年前に導入した新人事制度の効果だ。

同社の新森健之人事部長は「旧制度では入社11年目で管理職層に入ると、D~A級の4つの資格があり、それぞれ4年の滞留期間を設けていた。したがってA級の部長職に昇進するには最短でも45歳。実際はもっと遅かった。新制度では階段を取り外し、実力しだいで昇進できる仕組みに変えたことで若手の課長登用もかなり進み、部長も一気に若返ることになった」とその理由を語る。

住友商事の月給格差/住友商事のボーナス格差
図を拡大
住友商事の月給格差/住友商事のボーナス格差

いわゆる年次制限を撤廃したのだが、それだけではなく新制度は処遇面もユニークだ。

まず非管理職の一般社員層は入社後10年間はプロの商社マンになるための準備・教育期間と位置づけ、昇格のスピードに差を設けず同じ処遇とした。つまり、入社後の月給は毎年同期の社員と同じ金額ずつ上がり、10年目の32歳までほとんど格差をつけないというものだ。

一見、成果主義の流れに逆行するように見えるが「入社後10年間は確実に能力が伸びる時期。2~3年でずば抜けた成果が出せるほど商社の仕事は甘くない。10年間しっかりと教育し、プロの人材を育成する」(新森部長)という明確な狙いがある。

ただし11年目以降は給与・昇進など処遇に関してはガラリと変わり、年齢は一切関係のない、完全な実力主義の世界に放り込まれる。旧制度ではいったん昇格すると降格することはなかったが、新制度では同社が定義する「期待役割」を十分に発揮できなければ降格も常に発生する。

具体的には11年目から「基幹職A級」と呼ぶ枠に全員が入る。給与は下位のグレード(G)5から上位のG1の5段階を設定。グレードは全社一律のガイドラインである「期待役割測定シート」に基づく上司の評価で決定する。測定項目には「創造・変革」「折衝・交渉」「人材開発」「リーダーシップ」など9項目があり、それぞれについて部下に対す“期待度”を点数化し、合計点で本人のグレードが決定する。ちなみに500点以下はG5に格付けされ、501点を超えるとG4になる。

グレードと職位は必ずしも連動していないが、G4~3が課長クラス、G2が部長クラスである。

理論上は評価しだいで1年目からワンランク上のG4やG3に昇格することも可能だが、新制度スタート以降はG4への飛び級者はいない。その一方で、旧制度の管理職層では年齢に関係なく昇格・降格が相次いでいる。