公表して励まされたのは自分自身

また、ちょうどその頃にある著名人の方が、がん闘病を最後まで隠して亡くなられたことが報じられていました。仕事など周囲への影響を恐れてのことかもしれません。

この件について、私がTwitterで「がんの闘病を隠さずいられる社会になってほしい」と呟いたら、「話したら、周りでいろいろうわさされてイヤだった」「私もほとんど隠しています」といった患者さんからのコメントが多くつきました。

でも、私は覚悟を持って公表することにしました。がんは国民の2人に1人が一生のうちに罹患りかんすると言われています。誰もががんになる可能性があるのです。誰もががんを隠さずに、普通に生活していける世の中であってほしいのです。私はこの発信が、わずかでも何かの力になる可能性を信じました。

診断時に受けた衝撃、そこから始まった患者体験。さまざまな困りごと。私の気持ちを正直にツイートしました。

反響は予想をはるかに上回るものでした。ツイートは300万人近くの方の目に触れ、200を超えるコメントが届きました。皆、応援や励まし、そして無理しないでと心配する声ばかりでした。そして、このときから日々感じたこと、それに関連して患者さんに役立つ話題を発信し続け、そのたびに多くの反響がありました。

また、私と同じ甲状腺がんの患者さんからも、コメントが多く届きました。同じ病気の先輩患者さんは、治療の経過や先々感じるかもしれない困りごとを教えてくださり、これから治療される方とは一緒にがんばりましょうと励まし合いました。

がん患者さんに役立つだろうと思って始めた発信が、これらの反響を通じて私自身の力にもなったのです。治療を通じてつらかったとき、どれだけ励まされたか分かりません。

患者初体験、何げない楽しみが心の支え

最初はすべてが初体験で、検査や回診を楽しむ余裕がある私がいました。せっかくの個室ですから、荷物を広げて自分が使い勝手のよいように配置し、高層階でしたので窓の外の眺めを楽しみました。

それから、病院内の散策へ出かけました。セブン‐イレブンやスターバックスがあることは知っていたので、とくに用事はないのに行ってみたり。ただ、手術に向けて体調を整えるために甘いものや刺激物などは控えて、健康的に過ごそうと心がけていたので、買うにしてもお茶くらいに抑えました。

病院食は入院生活の中で数少ない楽しみです。初日の夜に出たのはプラスチックの器に薄味の煮魚でした。バランスよく、必要十分なものでしたが、やはり健康的な食事ばかりでは心は満たされません。無事に手術を終えたら、何を食べようということばかり考えていました。

ご褒美にスターバックスのフラペチーノを飲もうかな……。退院したらラーメンを食べに行こうかな……。そんな小さな目標が入院患者にとっては大切な支えだと知ったのです。

しょうゆラーメン
写真=iStock.com/masa44
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