コンセプトは「食を愛するブログの集合体」

村上ははっきりとしたコンセプトを持っていた。

「実際に店を訪れた人の口コミだけでなく、お店の写真や料理の写真も複数枚、投稿できるようにする」
「食を愛する人がつづるブログの集合体のようなサイトを目指す」

2005年に食べログをスタートさせた直後、村上と穐田は小山薫堂といったインフルエンサーに頼み込み、雑誌連載のグルメ記事を転載させてもらった。そのうちに有力なブロガー、インフルエンサーが口コミ情報を投稿するようになり、翌年には月間利用者が100万人を超え、2010年には1500万人を超えるまでに成長した。

村上のコンセプトがユーザーに理解されたのである。そして、一般ユーザーだけでなく、フードライターになりたい人がそこに長文レビューを投稿する場にもなった。「見て利用する」人だけでなく、メディアとして自分の意見を広めるサイトになった。

それもあって食べログは堅調だ。

コロナ禍の最中に発表されたデジタルコンテンツ視聴率レポート(ニールセン デジタル2022年6~7月)によれば飲食店予約サービスの上位3社、「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」の利用者数はそれぞれ次の通りとなっている。

「食べログ」が1850万人。
「ホットペッパーグルメ」が811万人。
「ぐるなび」は736万人。

結果は一目瞭然だ。

シャンパンで乾杯をする人たち
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

なぜ食べログは成功したのか

また、ぐるなびは退潮傾向にあるが、それでも利用者はまだ736万人もいる。一方、かつて隆盛を極めたグルメ雑誌は老舗の『dancyu』を除けばほぼなくなってしまった。

グルメ情報はウェブで閲覧するのが当たり前になり、そもそも紙の雑誌を手に取ったことがない人の方が多くなっている。

穐田は食べログが成長した理由は「運と気合」だと総括している。運とは正しい時代にサービスを開始したことだろう。そして、気合とは「負けてたまるか」というガッツであり、カカクコムの憲法のようなものだ。

なお、「東京レストランガイド」は大手資本が買収した。カカクコムが提示した価格よりも高かったという。しかし、結局は2012年にサイトを閉鎖してしまう。カカクコムは「東京レストランガイド」を買収しなくてよかった。

カカクコム、食べログは大資本、社員が高学歴だからといって成功したわけではない。

大資本、中央集権組織は最新の経営理論で目標を実現させようとする。自分たちの自己実現が経営だと思い込んでいるところがある。

穐田は会社経営を自己実現とは思っていない。ユーザーの不便をなくすこと。ユーザーが「これがあればいいな」と思っているものを提供することが経営だと信じている。

客が欲しいものは何かだけを考えているから、カカクコム、食べログを成功させることができた。