恵まれた結婚生活だったけれど……

新居は結婚相手の親が所有していた、神戸の一等地に建つ100m2以上ある広々としたマンションでした。

3人の子宝にも恵まれました。結婚相手は家事育児を手伝ってくれることはなかったので、それなりに忙しかったですが、基本的な生活は結婚前と何も変わってはいませんでした。

結婚して子どもが3人いる主婦になったというのに、なんと私は生活費がどこからどう出ているのかすら考えたことがなかったのです。

ちょっと生活費が足りないなと感じたら、「今月、お金ないの」と実家に駆け込んでいました。

どこに行くにも車を使っていましたが、ガソリン代を払ったこともありません。「ガソリン券」というのを持たせてもらい、支払いをそれですませていたからです。

30歳をすぎてもそんなことをしていたのですから、我ながら情けなくなってきます。

失恋
写真=iStock.com/Valentina Shilkina
※写真はイメージです

性格の違いに耐えられなくなっていった

そんなふうに何不自由なく過ごして、子どもたちもすくすくと育ち、順風満帆な結婚生活が続いていきました。

ところがそんな中で、私は結婚相手との関係に少しずつ違和感を覚えるようになったのです。それは相手も同じだったのではないかと思います。

結婚生活の中で私は、自分には衣食住すべてに「自分はこうしたい」というこだわりがあり、それを実行しないではいられない行動力の持ち主だということに気づき始めていました。

ひと言でいえば、常に何かを変えたい、変えていきたい、自分が変わり続けていたいという願望を持っているのです。それは今でも変わりません。

それに対して夫は、「これでいいじゃない」が口癖でした。私のすることに対して「なぜわざわざそんなことをするの?」と疑問に思い、納得ができないようなのです。

たとえば、こんなことがありました。

当時、私たちが住んでいたマンションのリビングには、比較的大きな扉つきの収納棚がありました。

その扉の裏側がむき出しのシナベニヤ合板で、私はそれがイヤでイヤでたまらず、ある日、ホームセンターでペンキと刷毛はけを買ってきて、ペールグリーンに塗ってしまいました。

結婚相手には、その私の行動がまったく理解できなかったようなのです。

なぜそのままではいけないのか、どうしてわざわざ塗る必要があるのか……さらに言えば、こんな気持ちもあったのではないかと思います。

「男の僕だってしないような、そんな手を汚すようなことを、なぜ女の君がしなくちゃならないのか」。

もちろん、これだけが原因ではありません。これと似たような無数の性格の違いが積み重なって、いつしか私は「ここにいては自分らしく伸び伸びと生きることができない」と感じるようになっていきました。