海外では電動キックボードを規制する動きも
こうした問題が山積しているのに、なぜ自転車の電化を急ぐのだろう?
思い起こせば1993年、世界初の電動アシスト自転車は、ヤマハ発動機のPASからスタートした。それは警察庁および運輸省・建設省(当時)などとの長年の協議の結果、生まれたものだった。
日本の交通状況、車道・歩道の差異、全国各地にある「○○ヶ丘ニュータウン」への坂道の斜度ほか、いろいろなことを考えて、電動アシストのあり方(人力センサーが必須なこと)や、アシスト率などを慎重に決めたのである。この頃の日本のお役人たちは、アタマは固いが、バカではなかったのだ。
それがなぜか今になってガラガラ崩れ始めている。
たぶんここまでこれを読んでこられた読者諸氏ならとうにお気づきだと思うが、このところの「電動○○」は非常に性急にコトが進んでいる。電動キックボードがいい例だが、たいして考えもせず、簡単に原付の指定をしてしまって、今それを特定小型と変更してしまった。すでにパリやシンガポールでは「危険だから」と禁止になってしまったにもかかわらずだ。
2023年の法改正は「道路行政痛恨の大改悪」に
「ナンバープレートを隠せば自転車として使える原付」なんてのも出た。分類①フル電動自転車のゴマカシ版だ。これ、私は先日、赤坂で走っているのを見たけど、「隠せば」どころか、そもそもプレートを付けずに、歩道をフルスロットルで走っていた。
なぜそんなに電化を急ぐのか、なぜ殊更に日本の道路をカオスにしたがるのか。
日本の道路交通と自転車には、昭和45年(1970年)の道交法大改悪というのがあって、そのとき以来「日本のチャリンコは歩道」という世界でも類例を見ないガラパゴス化が進んでしまった。
その詳細は、「日本の自転車事故は先進国最悪」堂々と歩道を走る“危険自転車”がいっこうに減らないワケで解説しているので、興味がある人は読んでみてほしい。
あのときと同じだ。令和5年の道交法見直しは「道路行政痛恨の大改悪」として歴史に残るだろう。